磯村勇斗が「社会への葛藤」を巧みに表現!倍賞千恵子の名演も心を打つ「PLAN 75」が抱える強烈なテーマ性
2023.2.26(日)
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昨年、日本映画「ドライブ・マイ・カー」の国際長編映画賞受賞が大いに話題を呼んだアカデミー賞。第95回を迎える今年も3月13日(月)(日本時間)に開催を控えているが、本年度の同部門日本代表としてノミネートが期待されていたのが、「PLAN 75」(2022年)だ。
残念ながらアカデミー賞選出は実現しなかったものの、第75回カンヌ映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門に出品された同作は、これが長編初監督作品となる早川千絵監督が「カメラドール特別表彰」を受賞。その後も、国際映画祭への出品が相次ぎ、30以上の国と地域での配給が決まるなど、世界中から大きな注目を集めた。

(C)2018 「Ten Years Japan」Film Partners
海外で注目されるきっかけとなった「ナイアガラ」(2014年)など、これまでにも数々の短編映画で頭角を現してきた早川監督。初長編映画「PLAN 75」も、是枝裕和監督が総合監修を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」(2018年)の一編として発表した短編「PLAN75」がもとになっている。
そんな原点とも言える同名短編を監督自ら長編化した「PLAN 75」は、75歳以上が自ら生死を選択することができる制度<プラン75>ができた架空の日本が舞台。超高齢化社会問題の解決策として施行されるが、対象者となる高齢者はどのように受け止めるのか。また事業に携わる若者たちは何を考えるのか――。
プラン対象者や制度側で働く人々の苦悩を通じ、"生きる"ということ、命の価値とは何かというセンセーショナルな問いをあらゆる世代に突きつけていく1作だ。
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(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
夫を亡くし、一人で慎ましく暮らす78歳の女性・ミチは、ある日、年齢を理由にホテルの客室清掃の仕事を解雇されてしまう。住む場所も失いそうな彼女は生きる希望を亡くし、<プラン75>の申請を検討し始める。一方、市役所の<プラン75>の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)をはじめ、制度をサポートする職に就く若者たちもまた、多くの高齢者と向き合う日々を送り、制度に対して複雑な感情を抱いていく...。
主人公・ミチを演じているのが、本作が9年ぶりの主演作となる倍賞千恵子。「最初は酷い話だと思って脚本を読み始めた」という彼女は、本編のあるシーンに強く惹かれ、出演を即決したと明かしている。セリフで多くを語るのではなく、日常の中のさりげない仕草で、ミチが抱える絶望など、複雑な感情を繊細に表現。重厚な作品のテーマに寄り添った深みのある姿を見せている。
そして、<プラン75>の申請にあたる市役所職員・ヒロムを演じたのが磯村勇斗。申請に訪れた高齢者に対し、人当たりのいい表情や口調で業務を担いながらも、ふとした瞬間に暗い影を落とす顔つきなど、徐々に制度に対し疑問を抱いていく複雑な胸中を体現。「倍賞さんとの共演シーンでは目で芝居をすることを意識しました」とコメントしているが、国民的な大女優と対峙しながら、丁寧な演技で社会の闇を浮かび上がらせた。
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(C)2022「PLAN75」製作委員会 / Urban Factory / Fusee
また、死を選んだ高齢者に最後まで付き添うサポート施設コールセンタースタッフの瑶子役には、海外評価の高い「ある男」(2022年)など、映画出演が続く若手の河合優実が抜擢。電話越しで高齢者とやりとりしながら、心が揺らいでいく様を、口調の揺れなど声の演技で見事に表現してみせた。
社会の潜む闇やその先にある一筋の希望を表す光と影――人の心を打つ美しい映像を生み出し、真摯な映画作りによって、"安楽死"という覚悟を問われるデリケートなテーマと正面から向き合っている「PLAN 75」。世界が称賛したその世界観をぜひ見届けたい。
文=HOMINIS編集部
放送情報
PLAN 75
放送日時:2023年3月12日(日)21:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2023年3月13日(月)17:45~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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