大沢たかおが衝撃の現実と向き合う医師を熱演！石原さとみ、真木よう子ら豪華共演陣も見どころの「風に立つライオン」

2023.12.19(火)

モデル活動を経て俳優へ転向し、現在も第一線で幅広い活躍を見せる大沢たかお。徹底した肉体改造にも取り組む真摯な役作りと、熱い男にも色気漂うヒールにもなれる高い演技力で、映画にドラマにと存在感を発揮している。近年では、二宮和也、中谷美紀とトリプル主演を務めた月9ドラマ「ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜」も大きな話題を呼んだ。

また、今年7月には、2019年からの大ヒット映画「キングダム」のシリーズ3作目となる「キングダム 運命の炎」(2023年)も公開。伝説の大将軍・王騎役を貫禄たっぷりに演じた。さらに、9月に公開した主演映画「沈黙の艦隊」(2023年)では、海自一の操艦を誇る海江田艦長を演じて新たな魅力を発揮している。

確かな実績を積み重ねてきた大沢が、企画段階から関わって映画化実現に奔走した作品が「風に立つライオン」(2015年)だ。本作は、アフリカで献身的な医療活動を行った実在の日本人医師・柴田紘一郎のエピソードにインスパイアされ、さだまさしが1987年に発表した同名曲をもとにした感動作。楽曲に感銘を受けた大沢がさだに小説化を勧めるだけでなく、映画化の企画段階から関わるなど熱意を注いだ。

映画では主演を務め、「解夏」(2004年)、「眉山」(2007年)に続く、さだ原作映画への出演を実現させた。国内外で高い評価を得る鬼才・三池崇史がメガホンをとり、石原さとみ、真木よう子、萩原聖人、鈴木亮平と共演者も実力派が揃っている。

1987年の日本、大学病院に勤める医師・島田航一郎(大沢)はケニアの医療施設に派遣されることに。シュバイツァー博士に憧れた航一郎にとっては願ってもない話だったが、女医として離島医療に従事する恋人の貴子(真木)との別れも意味していた。ケニアへ赴いて半年が経った頃、航一郎は国境近くの赤十字病院から協力を要請される。物見遊山のつもりで依頼を受けたが、少年兵たちが麻薬を打たれて殺し合いをさせられる紛争地の現実を知ることになる。

大沢が演じたのは、実在の日本人医師をモデルとする主人公・航一郎。大沢の演じた医師と言えば、2009年・2011年に放送されたドラマ「JIN−仁−」が思い起こされる。江戸時代へタイムスリップした現代の脳外科医を好演して代表作の一つにもなった。今作では、日本語や英語はもちろんスワヒリ語も飛び交い、まったく環境の異なる過酷な異国の地での医療に従事する医師を熱演している。

航一郎は、少年兵が殺し合うという紛争地の現実に衝撃を受け、物資も乏しい現地の赤十字病院への転籍を志願する。およそ日本では想像もしえないほどの悲惨な現実の中で医療活動を行い、心に深い傷を抱えた少年たちと相対するという難しい役どころだ。勉強を教え、食事を共にし、傷ついた彼らを温かく包み込み、優しい眼差しを向ける。

目に見える傷だけでなく心の傷にも全力で真っ直ぐに向き合ううちに、兄のような先生のような存在になっていく航一郎。「大丈夫」と言う穏やかな微笑み、「がんばれ」と自身に向けて叫ぶ背中に、今できることに全身全霊をかける強い思いが伝わってくる。心の中の悲しみや戸惑い、慈愛や希望も、大沢の瞳や声が雄弁と物語り、遠い祖国への想いを秘めながら医師として凛と立つ男を高い熱量で体現していた。

文＝中川菜都美

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