振り飛車の未来を示せるか。藤井聡太王将に菅井竜也八段が挑戦する「王将戦七番勝負」の展望はいかに
2023.12.6(水)
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藤井聡太王将に菅井竜也八段が挑戦する第73期ALSOK杯王将戦七番勝負。現代振り飛車党の第一人者が初挑戦で注目のシリーズだ。
挑戦者の菅井は王位1期、他に銀河戦や朝日杯と全棋士参加棋戦の優勝経験もあるトップ棋士だが、意外にも王将リーグ入りは今期が初だった。7人しか入れない王将リーグはA級順位戦以上に狭い門で、いかに入るのが大変かが分かるだろう。リーグ2戦目で永瀬拓矢王座(当時)に敗れたものの、3戦目で羽生善治九段に大逆転勝ち。その後も難敵を相手に3連勝でリーグを5勝1敗とした。一方の永瀬は開幕から4連勝したものの、最後の2戦で失速。結果は1敗が消えて、プレーオフになることもなく菅井の挑戦が決まった。
タイトル戦の登場は今年度の第8期叡王戦以来、二日制では2018年度の第59期王位戦以来となる。今期は王将リーグ以外でも好調で、充実の一年になっている。
展望記事ではおなじみになっているが、藤井は相変わらずスキがない。王座戦五番勝負で史上初の八冠制覇を成し遂げ、次の竜王戦七番勝負では充実した指し回しで同世代の伊藤匠七段に4連勝と圧倒。相変わらず勝率8割を超えており、年明けの対局には年度最高勝率更新の期待が懸かってくる。史上最強棋士としての歩みを着実に進めている。
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菅井は現代のトップ棋士では唯一の振り飛車党。このところ他のトップ棋士も振り飛車を採用することが増えているが、長い間指し続けているのは菅井のみだ。よって七番勝負も振り飛車シリーズになるだろう。
これまでの対戦成績は藤井から見て9勝4敗となっている。タイトル戦での顔合わせは春の叡王戦五番勝負以来2回目。そのシリーズは藤井が3勝1敗で防衛だったが、内容的には藤井が苦しんだシリーズだった。1勝1敗で迎えた第3局は相穴熊から菅井が見事な指し回しで優勢に。そのまま押し切られるのが普通だが、藤井はすさまじい粘りを見せて大逆転を収めた。続く第4局の千日手指し直し局も菅井の指し手が冴えて優勢になるが、決め手が見えずに2度目の千日手になる。打開していれば菅井に分があったため、こちらももったいない将棋ではあった。スコアが逆でもおかしくない内容だったろう。
そのシリーズは菅井が三間飛車で美濃や穴熊を使っていたが、菅井の作戦は幅広い。昨年の順位戦では中飛車、今年の将棋日本シリーズでは四間飛車で藤井と戦っている。どこに飛車を振るかも毎局注目されるだろう。藤井も中飛車以外に対しては持久戦が多いため、ガッチリ囲い合う対局が見られそうだ。
前回の叡王戦は一日制4時間と短かったが、今回の王将戦は二日制の持ち時間は8時間。藤井は時間が長い方が力を出し、菅井は逆に短い方が強みを発揮する印象がある。藤井に分があるだろうが、叡王戦での戦いぶりの再現にも期待したい。振り飛車の未来を示せるか、注目の七番勝負だ。
文=渡部壮大
放送情報【スカパー!】
王将戦開幕直前 挑戦者 菅井竜也 リーグ一挙放送
放送日時:1月1日(月)10:00~18:00
放送チャンネル:囲碁・将棋チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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