松雪泰子が繊細な演技で揺れ動く心を表現し、生田斗真が主演を務めた映画「脳男」
2023.11.30(木)
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第46回江戸川乱歩賞を受賞した首藤瓜於著の同名小説を映画化した「脳男」。爆弾テロ事件の容疑者として浮上した男を中心に、松雪泰子演じる精神科医・鷲谷真梨子の目線で描かれるバイオレンスサスペンスで、拷問や銃撃など過激なシーンもある中で、登場人物の心の弱さや闇に触れ、見る者の心をとらえていく。また、出演者も生田斗真、江口洋介、二階堂ふみ、染谷将太、光石研、甲本雅裕、小澤征悦、石橋蓮司、夏八木勲など豪華な面々で、一瞬も目が離せないスリリングな展開が続く見応え十分な秀逸作となっている。

(C)2013「脳男」製作委員会
年の離れた弟を無残に殺され、そのショックから精神を病んでしまった母を介護しながら暮らす鷲谷(松雪)は、精神病を患う人々のため、日々研究にいそしんでいた。勤め先の病院からの帰り道、いつものバスに乗り遅れた鷲谷だったが、そのバスが目の前で大爆発。火だるまになったサラリーマンや子供をなす術もなく呆然と見つめたり、助けを呼び、叫ぶ松雪の表情は印象的だ。
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(C)2013「脳男」製作委員会
一方、都内で起こっている連続爆弾テロ事件を追う刑事・茶屋(江口)は、やりたい放題に犯行を繰り返す犯人を追い詰めることさえできずにいた。目撃者と刑事として知り合った2人は、犯罪者であっても治療を受ける権利があると主張する精神科医と、人殺しは絶対に許さないという信念を貫く刑事として反目しながらも、事件解決のため協力関係に。
そんな中、遺留品を手掛かりに犯人のアジトと思われる倉庫を突き止めた茶屋。中から女性たちの叫び声が聞こえ、ドアを開けたその瞬間、倉庫は爆発し吹っ飛ばされる。火の海になった倉庫には、奇妙にも1人の男(生田)が無表情で立っていた。その男は「鈴木一郎」と名乗るが、それ以外は黙秘。精神鑑定を受けるため、鷲谷の病院へと移送されることに。精神鑑定では、聞かれたことは素直に答えるものの、感情の起伏は全くなく、その男に得体のしれない不気味さを感じる鷲谷。だが、テストを繰り返すうち、これまでの症例に当てはまらない、まるでロボットのような、その男にどんどん引かれていってしまう。
この男は何を考え、何を感じているのか――。男には本当に感情がないのか、正体を突き止めるべく、鷲谷が生い立ちを調べていくと壮絶な過去が次々と明らかになっていく。そして、男の琴線にようやく触れられたと思った瞬間、さっと離れられてしまう。悲しき過去を持つ男に引かれていく精神科医。心の奥底で引かれていくのを感じながら、決して許されないその思いを、揺れ動く心の機微を、松雪が見事に演じ切っている。
文=石塚ともか
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