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「Dr.コトー診療所2004」で見る吉岡秀隆の役者としての奥深さ

2023.10.12(木)

ドラマ「北の国から」シリーズ(1981年~2002年)で黒板純を20年にわたって演じ、国民的俳優として活躍し続ける吉岡秀隆。映画でも「学校」シリーズ(1996年、1998年)や「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズ(2005年、2007年、2012年)など多くの話題作に出演している。その中でも、ドラマ「Dr.コトー診療所」シリーズ(2003年~2006年、2022年)は彼の代表作の1つだ。

「Dr.コトー診療所」シリーズで主演を務める吉岡秀隆と共演の柴咲コウ
「Dr.コトー診療所」シリーズで主演を務める吉岡秀隆と共演の柴咲コウ

同シリーズは、山田貴敏の同名漫画をドラマ化したもので、離島での過酷な医療状況を軸に主人公の医者と島民たちとの心の交流を描いたヒューマン医療ドラマ。2003年に放送がスタートして人気を博し、特別編、SPドラマ、第2シーズンと続いて、2022年にシリーズ完結編となる劇場版が公開された。特に、日本映画専門チャンネルで11月4日(土)に2夜連続で放送されるSPドラマ「Dr.コトー診療所2004」は、シリーズの中でも吉岡の演技の奥深さが垣間見える作品といえる。

同ドラマは、吉岡演じる本島から来た医者・五島のひたむきさが頑なだった島民たちの心をほぐしていく様子を描いた第1シーズンと、友好的な関係が築かれた上でさまざまな困難に立ち向かう第2シーズンの橋渡し的な意味合いを持っている。

そして、最もすばらしいのは吉岡の五島としての佇まいだ。常に冷静で、優しく、温かく、誰に対しても寄り添い続ける存在として、第1シーズンから変わらず居続けている。つまり、周りの変化に流されることなく作品の軸として、決してブレずに存在し続けているのだ。例えるなら、夜の空の北極星のようなもので、どのシーズンにおいても吉岡が五島で在り続けているからこそ、環境や状況、島民たちの距離感、関係性がどれだけ変化しても作品の色を保ち続けていられるのだ。その"在り方"が最も出ているのがこのSPドラマといえる。

周りが変われば、役としてもついついつられて変化してしまいがちであるし、人間を演じることにおいてそれは1つの正解でもあるため、変化をもたらしたくなるのが人情だが、吉岡はあえて"北極星"であることを自分に課して作品と向き合っている。それは、登場人物たちだけではなく、視聴者も五島に触れるたびに安心感が得られ、作品の色を感じ続けることができる効果も生み出している。これは五島の成長物語ではなく、五島と島民による人間物語であることを芯に発信しているのだ。

加えて、そんな作品の大役を、ぐいぐい引っ張っていくようなキャラクターとは真逆のキャラクターで成し得ているところが、役者としての奥深さを証明している。周囲を力強く巻き込みながら状況を変えていくキャラクターなら"一等星"として発信力もあるが、"二等星"としてそこまで発信力を有さず存在を感じさせることができるのは、吉岡のキャリアあってのものだろう。

数ある話題作の中でも役者としての吉岡の奥深さを感じながら、五島と島民たちの心の交流を楽しんでみてほしい。

文=原田健

放送情報

Dr.コトー診療所2004(全2話)
放送日時:11月4日(土)16:00~
※同日12:20より特別編、11日(土)10:15より第2シーズンも放送。
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります