Uruが歌声で魅せた「contrast」。ツアーファイナルでは熱烈なスタンディングオベーションも

2023.10.10(火)

全12カ所・13公演にわたる自身最大規模の全国ツアー「Uru Tour 2023『contrast』」を完走したシンガーソングライター、Uru。全公演即日完売したプレミアムなツアーのファイナル、8月12日の東京・LINE CUBE SHIBUYA公演の模様が、10月29日(日)21時から、ＷＯＷＯＷプラスにてテレビ初独占放送およびスカパー！にて配信される。

2月にリリースした3rdアルバム「コントラスト」の収録曲群のほか、テレビドラマや映画、アニメ作品を彩ってきた名曲の数々、また、恒例のカバー曲シリーズでは久保田利伸の名バラード「Missing」やMrs. GREEN APPLEの大ヒットナンバー「ダンスホール」、さだまさしの「たとえば」なども織り交ぜた、バリエーション豊かなセットリスト。ステージを覆うたっぷりとしたドレープ状の紗幕には、蕾がほころんでいく一輪の花に始まり、場面ごとの世界観とリンクした映像がプロジェクションマッピングされていく。ピアノ、ギター、コーラスを担うサポートメンバーに囲まれて、ステージの中央に立つUru。一見すると儚げだが、しなやかな凛とした強さがひしひしと感じ取れる。繊細で時に力強く、ピュアで透明感に満ちたエモーショナルな歌声に、観客は深く集中した様子で聴き入っていた。MCでは一転してナチュラルな人柄を垣間見せ、親しみを込めて沸く客席からも、彼女の魅力が伝わってくる。

Uruが椅子に腰掛け、物語の朗読からスタートした「ハクセキレイ」は、電線に停まる二羽の鳥が大空へ飛び立っていく様を一筆書きしたアニメーションと共にパフォーマンス。優里が作詞作曲を手掛けた「そばにいるよ」では、色鮮やかな花冠のようなイメージ映像が紗幕に投影され、夢のような美しさだった。打ち込みを駆使したエレクトロナンバー「Break」では、鮮烈な赤い照明の下、静と動とを行き来するダイナミックな歌唱で惹き込んだ。曲によって様々な一面を見せては驚かせ、緩急のメリハリに富んだ表現を繰り広げていく。

とりわけ胸を強く打たれたのは、デビュー前からの目標だった東京国際フォーラム公演に向けて意気込んでいた矢先、「心と身体のバランスを崩してしまって...」と語り、2021年の出来事を振り返った場面。これまでインタビュー等で語られているように、国際フォーラムは、Uruがスキマスイッチのライブを観て音楽の道を志すに至った、出発点であり夢の場所である。臆病で周りの人と比べてばかりいた昔の自分が嫌いだったと語り、一度は開催を諦めようとしたものの、「自分と向き合って、心の底から胸を張って生きたかった。どうしても悔しくて、諦めきれませんでした」と当時の心情を吐露、Uruは言葉を詰まらせた。当時「もう少し時間をください」とスタッフに願い出て、周囲の支えを借りながら1曲、2曲と歌えるようになっていったという。「"もう昔の自分じゃないんだ"って。初めて自分を褒めることができました。そしてその経験があったからこそ、書けた曲があります。"今すごく苦しい状況にいる人の背中に優しく届いたらいいな"と思いながら歌うので、聴いてください」との言葉から、披露したのは「心得」。ドラマ『風間公親－教場０－』の主題歌として6月にリリースした繊細なバラードである。暗闇に射しこむ一筋の光のようなピンスポットに照らされ、切々と歌い始めたUru。歌声に宿るパワーと輝きは見る見るうちに増していき、強くなっていく照明と相まって、観客を大きな感動へと導いていった。

会場には老若男女幅広いファンが詰め掛けており、着座で静かにじっくりとUruの歌声に聴き入っていたのだが、最後の1曲を終えると熱烈なスタンディングオベーションが沸き起こり、大きな声援があちこちから叫ばれた。光と影の両極を内包し、温かな空気で満たされていた至福のライブ空間。音楽に真摯に向き合っていることが伝わってくるUruの姿に惹き付けられ、心洗われるパフォーマンスを映像を通して見届けていただきたい。

取材＝大前多恵

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