クォン・サンウの涙が美しく切ない！4人の男女の愛憎を描いたラブストーリー「バッド・ラブ」

2023.9.30(土)

2003年頃から始まった日本の第一次韓流ブーム。ぺ・ヨンジュンら韓流四天王をはじめとするスター俳優が人気を博し、「冬のソナタ」(2002年)などの韓流ドラマが日本中を席巻した。"冬ソナ"と同じく、「天国の階段」(2003年)もアジア中で空前のヒットを記録。韓国で最高視聴率45.3％を叩き出し、一大ブームを巻き起こした。ヒロインのチェ・ジウと共に主演を務め、トップスター街道へ駆け上がったのがクォン・サンウだ。

続く「悲しき恋歌」(2005年)も日本でヒットし、悲恋ドラマの名作と評された。繊細な泣きの演技は多くの視聴者の涙を誘い、サンウは"涙の貴公子"として不動の地位を確立。また、高身長かつ鍛え上げられた美しい肉体から繰り出される本格アクションも迫力があり、元祖モムチャン(肉体美)俳優とされる。バラエティ番組出演やディナーショー、ファンミーティングなども開催し、日本中のファンを大熱狂させた。

そんな第一次ブーム真っ只中の2007年、サンウが約3年ぶりに出演したドラマが「バッド・ラブ ～BAD LOVE～」だ。本作は、複雑に絡み合う4人の男女の愛憎を描いたラブストーリー。主人公は財閥の会長と愛人との間に生まれ、家族から愛されず孤独に生きてきたヨンギ。ニューヨーク留学中の恋が悲劇的な結末を迎え、もう二度と誰かを愛することはないと心に誓って帰国する。一方、チェリストのインジョンはスファンと恋に落ちるも、会長の娘婿である彼が既婚者であることを知ってしまう。

次々と不幸が降りかかるインジョンを見かねたヨンギは、廃校の工事現場の炊事係として雇う。心を閉ざしていたが、彼女の優しさに触れて少しずつ思いを寄せ始める。しかし、ヨンギの異母姉ジュランは、夫スファンとインジョンが不倫関係にあったことを知り、嫉妬に燃える。

主演のサンウは、複雑な家庭に生まれ孤独の中で育ったヨンギを演じた。留学中にアーティストの女性と恋に落ちるも彼女を失い、二度と誰も愛さないと心に決めている。複雑な生い立ちと辛い過去を持ち、心を閉ざしている男。しかし、自分と同じように傷ついた心を抱えながらも辛い境遇の中で懸命に生きるインジョンの温かさに、次第に惹かれていく。

彼女に寄り添うも義兄スファンとの過去の不倫関係を知り思い悩む。そして愛した男に裏切られた辛い経験を持つインジョンもヨンギの愛を素直に信じることができず、すれ違う2人。サンウの悲しみを秘めた瞳、憂いに沈む表情が胸を締め付ける。

深く愛した女性を忘れたいのに忘れられない。罪悪感や押し殺していた思いを爆発させるシーンも情熱的ながら自然で、葛藤や苦しみが伝わってくる。感情が高ぶり思わず溢れ落ちてしまう涙が、美しく切ない。一方で、インジョンをからかう時のおどけた仕草や表情も愛らしく、愛のこもった眼差しや彼女を軽々と背負ったり力強く抱きしめたりする男らしい姿とのギャップも見せた。多面的でナチュラルなサンウの演技が、ヨンギというキャラクターに息を吹き込んだ。

また、ヨンギの異母姉は夫と不倫していたインジョンに強い怒りを抱き、インジョンを諦めきれないでいる義兄はヨンギに対抗していく。4人の男女の愛憎渦巻くストーリーと波乱の展開、サンウらキャストの感情のこもった熱演で見応えあるドラマとなった。

第一次韓流ブームから今年で20年。初期の人気を支えてきたスター俳優でありながら、第四次韓流ブームが到来し47歳を迎えた今も第一線で活躍を続けているサンウ。当時のときめきが蘇る懐かしい本作では、その後の活躍も納得の名演技を見せた。

文＝中川菜都美

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