深田恭子が演じるロリータ少女が印象的な映画「下妻物語」
2023.9.18(月)
純白の生地にフリルをたっぷりあしらったロリータファッションに身を包んだ女子高校生が、黒い原付をかっ飛ばして田舎の田んぼ道を突っ走る――そんなインパクト抜群のオープニングシーンから始まる映画「下妻物語」は、深田恭子が演じるロリータ少女を主人公に、土屋アンナ演じるヤンキー女子高校生との友情を描く青春コメディーだ。
茨城県下妻に住む高校生・桃子(深田)は、ロココ時代のフランスに憧れる17歳。ロリータファッションが大好きな彼女は、崇拝するブランドの本店がある代官山に通い続けていた。洋服代のために父親が持つ偽ブランド品を売りに出した桃子は、それを買い求めてやってきた地元の暴走族所属の少女・イチゴ(土屋アンナ)と出会う。やがてイチゴは桃子の元に頻繁にやってくるようになり、桃子は何かと構ってくるイチゴのことを面倒に思いながらも、2人の間に不思議な絆が芽生え始める。
まず何よりも目を奪われるのは、フリフリのロリータファッションを完璧に着こなす主演の深キョンだ。くりっとした大きな瞳に金色がかった巻き髪、純白や可憐な赤のロリータ服を身にまとった彼女の姿は、まさに精巧に作られた人形のよう。そんな少女漫画の世界から出てきたかのような深田が何の変哲もない田舎の田んぼ道を歩いているのだから、その絵面だけでコメディーとして成立してしまう。
©2004 「下妻物語」製作委員会
21世紀という現代の下妻で物語は展開するが、この映画はなぜかファンタジーのような印象を抱かせる。それは主人公の桃子をはじめ、登場人物の全員が癖の強すぎるキャラクターだからだろう。脇を固めるキャストには宮迫博之に篠原涼子、樹木希林といった豪華な顔ぶれが出演し、その全員がアクセル全開で個性的なキャラを炸裂させる。
そんな面々の中心で、この世界観を背負う主役である深田はやけに静かというか、冷めてすらいる。それは超マイペースな変わり者という桃子のキャラクター性に起因するものでもあるが、全員が全員尖ったキャラという中で埋もれも食われもせずしっかりと存在感を放っている深田はさすがのものだ。
©2004 「下妻物語」製作委員会
家族に対しても冷めた感情しかなく、友達も必要ないと断言する桃子。しかし自分さえ幸せならそれでいいと思っていた彼女も、イチゴとの出会いで徐々に変わり始める。ラストのクライマックス、可愛らしいお人形のようだった桃子の豹変ぶりには誰もが舌を巻くことだろう。
本作は海外でも評価され、主演の深田は第59回毎日映画コンクールなど3つの映画賞で主演女優賞を受賞した。今も第一線で活躍する深田のキャリア初期の名作を、今一度楽しんでほしい。
文=本永真里奈
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