柳楽優弥、撮影当時12歳の鮮烈デビュー作「誰も知らない」で、ティーンエイジにしか出せない目ヂカラに引き込まれる
2023.8.29(火)
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19年前に公開された「誰も知らない」はかなりの衝撃作だった。日本の観客にとってはもちろん、作品が上映されたカンヌ国際映画祭など、海外の観客にとってもだ。1000万以上の人がひしめく東京で、4人の幼い子が保護者なしに、食べるものも手に入らない状態で暮らしているのに、周囲の大人たちは誰もそのことに気づかない。実際にあった育児放棄事件を基に、是枝裕和監督が構想15年をかけて制作・撮影したこの映画。先進国である日本でもそんな異常なことが起こりうる、いや、実際に起きているのだと突きつけられたからだ。
シングルマザーの母親・けい子(YOU)は、長男・明(柳楽優弥)との2人暮らしだと偽って新しいアパートに入居し、長女の京子(北浦愛)、次男の茂(木村飛影)、次女のゆき(清水萌々子)には「部屋の外に出てはいけない」というルールを言い渡してひっそりと暮らし始める。母がデパートで働いで生活費を稼ぎ、12歳の明が母親代わりに料理を作り、京子が洗濯をし、家族5人は彼らなりに幸せな毎日を過ごしていた。
しかし、ある日、母は明に「好きな人がいるの」と告げ、ぷっつりとアパートに戻らなくなる。子どもたちのそれぞれ違う父親は、事情を知っているが知らんふり。無戸籍ゆえ学校にも通っておらず、児童養護施設に入ったら兄弟4人バラバラになってしまう恐れがあり、誰にも助けを求められない子どもだけの生活は、やがて暗転してしまう。

(C)2004「誰も知らない」製作委員会
柳楽は本作が映画デビュー作。オーディションを受けたのもこの作品が初めてだったとか。そんな柳楽を是枝監督は「目に力がある」と抜擢し、まる1年かけて撮影。その結果、いきなりカンヌ国際映画祭の男優賞を史上最年少(当時14歳)で獲得したというエピソードは有名だ。
明は母親思いの素直な子だが、思春期に入り、母がいかに無責任なことをしているかもわかってきている。「ちゃんとクリスマスには帰ってくるのか」「いつになったら学校に通わせてくれるのか」と問いかける目には、母への愛と反発心がないまぜになった感情が浮かぶが、やはり目ヂカラがすごい!ティーンエイジの少年少女にしかない澄んだ瞳で、見る者を映画の世界に引き込んでいく。
明はいわゆるヤングケアラーとして妹たちや弟たちの面倒を見ているが、つい、同年代の子どもたちと遊びたくなってしまったり、学校のグラウンドで行われる野球の試合に飛び入りしたりして、本来の活発な子どもらしさを見せる場面も印象的だ。
柳楽は、国内外で絶賛されたように、明そのものにしか見えない自然な演技で、この特殊な状況を描いた映画にリアリティをもたらしている。ドキュメンタリーを撮っていた是枝監督は子どもから自然な演技を引き出すのがうまいが、その是枝監督も絶賛しているように、柳楽には天性の才能があったのだろう。そして、現在も第一線で活躍している。
「誰も知らない」の繊細な表現とは真逆の方向性であるコミカルな役も上手く、連続ドラマ初主演作となった「アオイホノオ」や実写版「銀魂」シリーズの土方十四郎役では、かなりはっちゃけた演技を披露している。宮藤官九郎脚本の「ゆとりですがなにか」で演じた永遠の浪人生・まりぶも、面白おかしい役。10月に公開予定の映画版「ゆとりですがなにかインターナショナル」でも、IKKOの「どんだけ~!」を真似している。
子どもの7人に1人が貧困に陥っているという現在、「誰も知らない」のメッセージは改めて真摯に受け止めるべきだが、あまりの衝撃に打ちのめされてしまったら、他の作品で柳楽のコメディ演技を堪能し、ほっとひと息つくというのも、おすすめだ。
文=小田慶子
放送情報
誰も知らない
放送日時:2023年9月2日(土)13:00~
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2023年9月14日(木)13:00~
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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