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二宮和也と吉永小百合が親子役を好演!原爆でこの世を去った青年の心情が痛いほど伝わる映画「母と暮せば」

2023.8.24(木)

「母と暮せば」(衛星劇場)
「母と暮せば」(衛星劇場)

1999年にアイドルグループ「嵐」のメンバーとしてデビューし、現在では俳優としても高い評価を得ている二宮和也。二宮が出演した多くの作品の中でも、特に強く印象に残るのが第二次世界大戦に関係した作品だ。

クリント・イーストウッドが監督を務めた2006年公開の映画「硫黄島からの手紙」では、ハリウッドデビューを果たすと同時にその演技力の高さが話題となった。2022年公開の主演映画「ラーゲリより愛を込めて」でも、その表現力で共演者のことまで感動させたという。

そして、その中の1つとして忘れてはならないのが、2015年公開の映画「母と暮せば」。本作は作家・井上ひさしの構想を山田洋次監督が映画として完成させたもので、原爆投下後の長崎を舞台とした物語だ。

親子を演じる吉永小百合と二宮和也
親子を演じる吉永小百合と二宮和也

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

二宮が演じる医学生・福原浩二は、原爆が投下された時、爆心地に近い長崎医科大学にいた。同校では原爆の熱と爆風によって900人近い者が命を落とし、浩二もその中の1人だった。吉永小百合が演じる母・伸子は浩二の死を受け入れられずにいたが、原爆投下から3年後のある日、突然、浩二が伸子の前にひょっこり現れ、幸せだが不思議な時間を過ごすことになる。

浩二は活発で感情豊かな青年で、生前も、死後にひょっこり現れてからも、伸子の前でよく笑い、よく話す。初めて姿を現した時は、少し寂しげだが、優しくて、懐かしそうな眼差しで伸子を見つめる。浩二の気配に気づいた伸子に「僕だよ」と語りかける時の表情は、あどけなく、また親しげで、まるで本当の息子のようだ。

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

また、浩二には、気にかけている女性がいる。生前付き合っていた町子(黒木華)だ。伸子に町子のことを聞く時、聞きたい気持ちを抑えられない様子はとても可愛く映るし、自分の部屋で町子と写っている写真を見つけて寂しげに微笑む様子は、儚げで見ている者の胸を打つ。

物語が進むと、伸子は浩二への思いを貫き独身でいる町子を気にかけるようになる。もし町子に好きな人が現れたら、「その時は、母さんもあんたも、あの子のこと諦めるしかないでしょ」と伸子は語るが、町子への思いを捨てきれない浩二は取り乱す。伸子に諭され、泣き顔で姿を消すシーンは、あまりにも物悲しい。

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

二宮が演じる浩二は、伸子に対しては息子としての甘えや感謝の気持ちを、結婚まで考えていた町子に対しては切なさや寂しさを、隠すことなく出してくる。そんな浩二という人物を丁寧に表現し、原爆によってこの世を去った浩二の思いまで伝わってくるのは、二宮の演技力があってこそだ。

浩二と伸子の空気感の良い会話も秀逸で、見ていると本物の親子のように思えてくるから不思議だ。二宮と吉永は本作が初共演だが、吉永は二宮の小さい頃の写真を見て、母親役としての役作りに励んだという。二宮の演技力はもちろん、真摯に役作りに向き合う吉永の努力があったからこそ、多くの人の心を揺さぶる作品となったのだろう。

(C)2015「母と暮せば」製作委員会

本作は第39回日本アカデミー賞において、優秀作品賞のみならず、二宮は最優秀主演男優賞、吉永は優秀主演女優賞と、多くの部門で賞を受賞している。終戦から80年近くが経過した今こそ、この名作を通じて、過酷な時代を生きた人々の思いに触れてみてほしい。

文=堀慎二郎

放送情報

母と暮せば
放送日時:2023年9月7日(木)18:15~、2023年9月29日(金)8:30~
チャンネル:衛星劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます