若き長嶋茂雄監督をはじめ、昭和の巨人軍の選手が登場する貴重な短編映画
2023.8.14(月)
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1977年に公開された映画「ジャイアンツのこども野球教室」は、東映まんがまつりで上映された児童向け映画である。24分という短編であるが、読売巨人軍の全面協力のもとで、長嶋茂雄監督はじめ当時のジャイアンツの主力選手が登場する、コアな野球ファンにはたまらない作品となっている。
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(C)東映 ※協力・東京読売巨人軍
公開当時は、長嶋監督就任が3年目を迎えるシーズンの直前にあたり、まさかの最下位に終わった前年のリベンジを見事に果たし、リーグ優勝を果たしたシーズンのオフというタイミング。長嶋巨人の人気は絶大なものがあり、ホームラン世界記録に挑む王貞治を中心に、日本ハムから移籍して大活躍を果たし、長嶋巨人V1の原動力となった張本勲、外野からサードへの華麗なコンバートが成功し、打線の要となった高田繁らが打線の要。投手陣ではエースの堀内恒夫が大黒柱だった。本作には、そんなジャイアンツの選手たちが出演し、少年チームの子供たちに直接指導をするストーリー仕立てになっている。
「出ると負け」の弱小チーム「リトルジャイアンツ」の子供が、強くなりたい一心で長嶋監督に手紙を出し、巨人軍の選手たちが特別に指導してくれることになるというストーリー。舞台となるのは、昭和の野球ファンにはおなじみのジャイアンツの練習場である「多摩川グラウンド」。「リトルジャイアンツ」の子どもたちは、ここで巨人軍の現役選手たちから指導を受ける。メインで登場するのは、長嶋茂雄監督をはじめ、王貞治、張本勲、堀内恒夫、高田繁に加えて、守備の名手と称された名二塁手の土井正三といった顔ぶれ。
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(C)東映 ※協力・東京読売巨人軍
子どもたちが王、張本と共にランニングする場面からスタート。王選手が「道具を大事にしなくちゃいけないよ」と子供たちに諭すシーンが印象的だ。高田と土井は野球の基本であるキャッチボールの指導を行う。堀内はもちろんピッチングの指導。投手の子供に投球フォームや握りの指導を丁寧に行う。ストーリー仕立てにはなっているが、このあたりの野球の指導は実戦的で役に立つもので、「当時の野球少年たちが映画館で夢中になって見たのだろうな」などと想像すると楽しい。
さらに土井から守備の指導を受けて高田にノックしてもらい、王&張本が打撃指導を行う場面へと続く。長嶋監督も登場し、「プロ野球の選手でも基本をいかに大切にしているか」とか、「野球だけでなく、学校の勉強もしっかり頑張って立派な大人になろう」という訓話があったりして、子供向けの教育映画としても楽しめる内容だ。自分に自信が持てず、ネガティブな発言をする子供に対し、熱い言葉でエールを贈る若き長嶋監督の姿にも感動できる。
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(C)東映 ※協力・東京読売巨人軍
近年は、プロ野球こそ盛り上がっているものの、野球を楽しむ子供たちの数が減少し、競技熱の低下が叫ばれている。昭和の頃に比べれば、サッカー等に押されて少年野球チームの数もだいぶ減っているのは確かだろう。そんな時代だからこそ、この作品が放つ強いメッセージは、昭和の野球少年だった我々世代の胸に響いてくる。
本作において「道具を大切にしよう」とか「基本が大切だ」、さらに「勉強も頑張ろう」といった選手から語られる教えは、現代の子供たちにも届けたい訓話である。
本作に込められたメッセージの意味は令和の現代でも立派に通用するものばかりだ。昭和のジャイアンツの選手が届けてくれる言葉の意味の重さ、大切さを我々現代人もしっかりと受け止めるべきかもしれない。
「ジャイアンツのこども野球教室」は、現在まで映像ソフト化がされておらず、放送される機会が滅多にない貴重な作品である。読売ジャイアンツのファン、プロ野球のファンにはとどまらず、子供たちなど現代の多くの人にも長嶋監督ら巨人軍の選手が出演する作品としておすすめしたい。
文=渡辺敏樹
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