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北村匠海が破天荒な父親のもとで成長する若者を熱演!家族の絆に心温まる映画「とんび」

2023.7.11(火)

幼少の頃から子役として活躍し、今現在、俳優はもちろんダンスロックバンド「DISH//」でリーダーを務めるなど、幅広い活動を続ける北村匠海。映画初主演となった2017年公開の「君の膵臓をたべたい」では、第41回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞していて、その実力は折り紙付きだ。

北村には、青春映画がよく似合う。先の「君の膵臓をたべたい」を始め、高校生活の中で4人の仲間たちの恋心が交差する2020年公開の映画「思い、思われ、ふり、ふられ」や、東京で暮らす若者の恋と葛藤を描いた2021年の「明け方の若者たち」などは、その代表作といえる。

どこかあどけなさの残る面立ちに、何かを秘めたような大きな瞳。そして多感な心情を余すところなく伝える演技力があるとなれば、思春期の若者や、社会に出たての若者役のオファーが多いのもうなずける。

そんな北村が、周囲に支えられ成長してゆく若者を演じた作品として注目したいのが、直木賞作家・重松清のベストセラー小説を原作とした2022年の映画「とんび」だ。事故で母を失った父と子の絆や、周囲の者たちとのふれあい描いた物語で、青春映画とはひと味違う北村の熱演が味わえる。

映画「とんび」で親子を演じる北村匠海と阿部寛
映画「とんび」で親子を演じる北村匠海と阿部寛

(C)2022「とんび」製作委員会

時は昭和37年、瀬戸内海に面した広島県・備後市。主人公は阿部寛演じる父親・市川安男で、北村はその息子・旭を演じる。破天荒な安男は無茶をすることもあるが、家族思いの父親。妻の美佐子と旭の3人で仲睦まじく暮らしていたが、美佐子はある事故でまだ幼い旭をかばい、命を落としてしまう。安男は同じ町に暮らす仲間に支えられながら、男手ひとつで旭を育てていく。

幼少期から中学時代までの旭は子役が演じる。安男が自転車に乗せて幼稚園に連れて行ったり、安男と旭を寺の住職が励ましたりする温かいシーンが描かれ、旭が父や町の皆に守られて成長していくのがよく分かる。

(C)2022「とんび」製作委員会

北村が登場するのは、旭が高校生に成長してから。野球部の後輩の尻をバットで殴ったことを咎められ、安男と言い合いになる。その時の尖った声と上目遣いの攻撃的な眼差しは、反抗期の高校生そのものだ。その時、旭は安男に殴られてしまうのだが、家に戻った安男を、今度は旭が母の死を持ち出して責めたてる。安男にとっては心がえぐられるような言葉だが、加減を知らないそんな旭の姿もまた、若者らしいと言えるかもしれない。

そして言い合いの果てに、突然、安男が自分自身を殴り始める。そこには、旭が人を傷つけるような子供になってしまったことへの悲しみがあった。不器用だが、息子を愛するそんな安男の姿にはホロリとさせられるし、旭もまた、少し泣いているような様子で笑顔を見せる。その笑顔には、父親からの自分への思いに触れた嬉しさがこもっているようにも見える。

また、自分たちを支えてくれた住職の看病の帰り、顔を歪めて旭が泣き出すシーンでは、押し寄せる悲しみに抗いきれない様子が伝わってくる。その時々の旭の心情が伝わってくるのは、やはり北村の演技の力だろう。父として旭をしっかり包み込む阿部の演技もさすがで、いつの間にか2人が本当の親子のように見えてくるから不思議だ。

旭はその後大学に受かり、東京へ出て一人暮らしを始める。やがて就職し、さらには結婚の話まで持ち上がる。旭が自分の人生を開拓していくたびに、喜びながらも素直になれない安男には手を焼くが、何があっても安男は旭を愛し、旭もまた安男を思っているのが、セリフからも、演技からも伝わってくる。

北村はもちろん、阿部の秀逸な演技によって、本作は"家族の絆"が強く感じられる作品になっている。今の時代だからこそ、ぜひ見ていただきたい作品だ。

文=堀慎二郎

放送情報

とんび
放送日時:2023年7月29日(土)20:00~
チャンネル:WOWOWシネマ

放送日時:2023年7月30日(日)10:00~
チャンネル:WOWOWプライム

※放送スケジュールは変更になる場合がございます