「愛に一途な男」のイメージを決定づけたソン・スンホンの代表作！20数年が経っても色褪せない四季シリーズの世界観

2023.7.10(月)

5月から配信が開始されたNetflixシリーズ「配達人～終末の救世主～」で、世の中を支配する一大組織の後継者を演じ注目を集めているソン・スンホン。これまでの真っすぐで優しいキャラクターから一変、そのイメージを打ち破るような"ヴィラン"の姿はファンならずとも衝撃的だ。

そんなソン・スンホンが一躍トップスターへと躍り出た作品といえば、韓流ブームの原点といえるユン・ソクホ監督の"四季シリーズ"。

第一次韓流ブームを巻き起こすきっかけとなった四季シリーズの代表作「冬のソナタ」の日本放送開始から、今年で20周年という節目(韓国放送は2002年)を迎えているが、スンホンは同シリーズの人気を形作った第1作「秋の童話」(2000年)と第3作「夏の香り」(2003年)に主演し、一気にスターダムへと駆け上がった。

シリーズの"秋編"となる「秋の童話」は、かつて兄妹として育った男女が辿る切ない運命を描くラブストーリー。

裕福なユン家で育った妹思いの長男ジュンソ(スンホン)と、その妹ウンソ(ソン・ヘギョ)は何不自由のない暮らしを送っていたが、ある交通事故で、ウンソがユン家の実子でなかったことが発覚。実の家族のもとにウンソが引き取られ兄妹は離れ離れに...。やがて10年という歳月が経過し、大人になったジュンソとウンソが再会を果たしたことから、禁断の物語が紡がれていく。

再会した時、ジュンソには婚約者、ウンソにも積極的にアプローチしてくる勤め先のホテルの御曹司・テソク(ウォンビン)がいた。それでも2人の間に漂う親密さは、兄と妹としての懐かしい情ではなく、恋心によるものだったと徐々に気づいていく。

このドラマを機に大ブレイクしたスンホンとヒロイン役のソン・ヘギョとの悲恋は、真実を知ってもなお深く愛し合う真っすぐな想いに胸を締め付けられる。ドラマの中で幾度なく流れる2人の涙は本当にピュアで儚く、今見るとどこかレトロで切なさが増す秋の美しい情景も記憶に刻まれていることだろう。

一方、シリーズの"夏編"となる「夏の香り」は、スンホンとソン・イェジンが共演した運命的でピュアなラブストーリー。

スンホンが演じるのは、結婚式を控えていた最愛の女性・ウネを交通事故で亡くし、5年が過ぎた今も、その心の傷が癒えないミヌ。アートディレクターとなった彼は、2人の思い出の場所である智里山(チリサン)に向かうが、そこで野草花を見に来ていたフローリストの女性・ヘウォン(イェジン)と出会う。なぜかウネの存在を思い起こさせるヘウォンのことが気にかかるが、一方のヘウォンも、心臓が激しく高鳴るミヌとの出会いに奇妙な縁を感じる。

数年前に心臓移植を受けたヘウォンは、幼い頃から一緒に育ってきた恋人・チョンジェ(リュ・ジン)とも順調な日々を送っているが、名前も告げずに別れたミヌのことが頭から離れない。すると、チョンジェの父親が手がけるリゾートプロジェクトで、2人は思わぬ再会を果たすことに...。

不思議な絆で結ばれたウヌとヘウォンの、心で通い合っていく恋を描く本作は、徐々に距離が縮まっていく2人の過程がロマンティック。夏らしいカラフルなファッションや帽子をまとった爽やかな2人のやり取りは、実に瑞々しく、時に情熱的に見る者の心を揺さぶる。

生命力を感じる爽やかな緑の風景も見どころで、臺山や德裕山の山林、宝城の茶畑など自然の映像美は圧巻。特に宝城の茶畑はドラマ放送後に観光スポットになったほどで、スケール感たっぷり切り取られるシーンの数々は今見ても色褪せず、鮮烈だ。

ユン・ソクホ監督ならではの叙情的な世界観の中で、確かなスター性を放ちつつ、繊細な表情や演技で魅せるソン・スンホンの初期の代表作。一途な愛を表現するハマリ役のキャラクターとその切ない初恋には、その後に一大ムーブメントとなる"韓流"の魅力が凝縮されている。

文＝川倉由起子

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