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「相棒」で見せる水谷豊と反町隆史による餅つきのような一体感【第1話無料放送】

2023.2.16(木)

単発ドラマ時代から数えて20年を超える大人気ドラマシリーズ「相棒」。水谷豊演じる杉下右京の"相棒"が定期的に入れ替わっていくという斬新な構成で、多くのファンに愛される長編のシリーズとなっている。

(C)東映

初代の亀山薫(寺脇康文)から始まり、2代目の神戸尊(及川光博)、3代目の甲斐享(成宮寛貴)とそうそうたるメンバーが務めてきた"相棒"だが、中でも反町隆史演じる4代目の冠城亘はseason14からseason20まで約6年半に渡って歴代最多の登場を果たしている。

そんな最も"相棒"歴の長かった水谷と反町のチームワークの良さを感じられるseasonとしてseason16の第1話を取り上げてみたい。

自身の妻を相次いで殺害した連続殺人事件の容疑者である大富豪の平井(中村俊介)が、弁護士の慶子(中村ゆり)を通じて警視庁を脅迫罪で告訴する。脅迫によって自供を迫られたという平井の訴えに、身に覚えのない右京と亘は「取調時の録画を見れば分かる」と高を括る。一方、特命係に敵意を抱いている法務事務次官の日下部(榎木孝明)は、旧知の検察官・田臥(田辺誠一)に東京地検で告訴状を受理するよう指示し、脅迫罪ではなく"捜査権のない特命係の違法捜査"として立件しようと画策。そんな中、平井の要望で取調時は録音も録画もされていなかったことが判明する、というストーリー。

同シリーズならではの練られた怒涛の展開も魅力なのだが、注目すべきは水谷と反町の息の合った掛け合いだ。歴代の"相棒"たちと右京の掛け合いももちろんすばらしいのだが、"息の合った"という観点で見れば、亘が一番なのではないだろうか。というのも、会話のリズムが2人で1つのリズムを奏でており、例えるならベテランの餅つきを連想させる。

(C)東映

それが顕著に感じられるのは、2人による掛け合いというより、2人の第三者に対するセリフ回しだ。容疑者の平井や慶子に対してや、捜査一課の伊丹と芹沢、さらにはサイバーセキュリティ対策本部の青木(浅利陽介)に対してなど、「特命係」としての言い分を語る時の一体感は筆舌に尽くし難い。特に同回は、2人が田臥に事件のあらましを振り返りながら説明するというナタラージュの構成で描かれているため、長い説明も2人の補完しあうセリフ回しがリズミカルで、全く"説明"であることを感じさせないのだ。

作品の軸となる水谷の表現する右京との色の違いをどう出すかが"相棒"の命題であろうが、反町は亘に"品の良さ"や"スマートさ"など(あくまで他の"相棒"と比べてではあるが)あえて右京と似た要素のあるキャラクター作りで、これまでと違った"相棒"像を描き出している。もちろん、そこには水谷の作る右京というどっしりとした柱があってのことであることは言うまでもない。そんな似た部分の多い2人であるが故に成立する息の合った一体感は、他のシリーズにはない魅力であろう。

(C)東映

加えて、亘が法務省のキャリア官僚から異例の措置を経て警視庁の一員となったという人間性における異分子感を、取手を持たずにカップを持ち上げることで表現している反町の細かい仕事についても触れておきたい。

作品の幹のように樹立する水谷の右京と、他の"相棒"たちとは一線を画すキャラクターを作り上げた反町の亘の、息の合った芝居を楽しんでいただきたい。

文=原田健

放送情報

相棒 season16 #1

放送日時:2023年3月5日(日)16:00~  無料放送

チャンネル:東映チャンネル

※放送スケジュールは変更になる場合があります