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堤真一が原作人気の高いキャラを好演!映画「姑獲鳥の夏」でも独自の魅力を放った京極夏彦の世界観

2023.6.24(土)

「姑獲鳥の夏」
「姑獲鳥の夏」

ミステリー界に衝撃を与えた「姑獲鳥の夏」でデビューを果たしてから約30年間にわたり、多くの作品を世に送り出してきた京極夏彦。妖怪をタイトルに冠した「百鬼夜行」シリーズをはじめ、怨霊や怪談といったオカルトをベースにした作品の世界観も独特。1000ページを超える作品も珍しくないが、それにもかかわらず気づけば数日で読了してしまうような蠱惑的な物語や文章のうまさで読者を惹きつけている。

難しい漢字を多用し不穏感や時代感を演出する、情景が目に浮かぶような文章は、映画、ドラマ、アニメで繰り返し映像化されているが、2005年の映画「姑獲鳥の夏」もそのうちの一つだ。

キャストたちが京極夏彦ワールドを体現している「姑獲鳥の夏」
キャストたちが京極夏彦ワールドを体現している「姑獲鳥の夏」

(C)2005「姑獲鳥の夏」製作委員会

京極のデビュー作を、独自の映像美で知られる巨匠・実相寺昭雄が映画化した本作。1952年の東京を舞台に、ある産婦人科医院の娘が20ヶ月も子どもを身籠もったままだという噂を追ううちに作家の男・関口は怪事件に巻き込まれる。友人の中禅寺秋彦(京極堂)とともに、その謎を関係者が納得できる形に解明する「憑き物落とし」の様子が描かれていく。

タイトルにもある「姑獲鳥」という難産で死んだ女性の霊の妖怪にまつわる物語をベースに、密室からの失踪や新生児連続誘拐といった怪事件が絡むおどろおどろしい物語、大胆なトリックが炸裂する京極ワールド全開の1作。ケレン味のあるキャラクターもこの世界観を構築している。

「姑獲鳥の夏」
「姑獲鳥の夏」

(C)2005「姑獲鳥の夏」製作委員会

本作の主人公となるのが、関口が頼る京極堂こと中禅寺秋彦。古本屋を営む京極堂は神主でもあり、安倍晴明の流れを汲む陰陽師。「この世には不思議なことなど何もないのだよ」が口癖で、何を考えているのか分からない飄々としているが、博識な知識を生かしながら事件の謎にじりじりと迫っていく。

「百鬼夜行」シリーズの軸として数多くの作品に登場するこのキャラクターを演じたのは堤真一。京極堂の浮世離れした雰囲気を、ゆったりとしたセリフ回しや何ごとにも動じない余裕溢れる佇まい、時おり浮かべる精悍な顔つきまで、巧みに表現している。

「姑獲鳥の夏」
「姑獲鳥の夏」

(C)2005「姑獲鳥の夏」製作委員会

その他のキャストも豪華な顔ぶれが並んでいる。永瀬正敏が演じたのは京極堂に相談を持ちかける関口巽。事件に追い込まれ慌てふためいたり、真相に迫り悲観したりと、どこか情けない人間味が魅力的だ。そんなキャラクター像を、うつむきがちな視線やボソッとした声色など、永瀬が人間臭さに溢れる芝居で表現した。

同じく事件に一枚噛んでいる破天荒な探偵・榎木津礼二郎には阿部寛が配役されており、笑顔を浮かべて余裕綽々といった語り口、高身長を生かし白のスーツを着こなす姿など、スマートでどこか不遜な存在感はピカイチだ。

さらには事件のきっかけとなる裏がありそうなミステリアスさと退廃的な雰囲気がただよう久遠寺梗子に扮した原田知世のほか、デリカシーのない横柄な刑事・木場修太郎役の宮迫博之、京極堂の妹・中禅寺敦子役の田中麗奈といった実力者たちの演技合戦も見どころだ。

「魍魎の匣」
「魍魎の匣」

(C)2007「魍魎の匣」製作委員会

「魍魎の匣」
「魍魎の匣」

(C)2007「魍魎の匣」製作委員会

また匣の中に入った少女たちのバラバラ死体や、女優の娘の失踪、怪しげな宗教団体の3つの謎を題材としたシリーズ2作目「魍魎の匣」も制作された。バトンを受け取った原田眞人監督のもと、主要人物はほとんどが続投。関口役は永瀬から椎名桔平に変わっているが、これまたボソッとした語り口や猫背気味の姿勢など、どこか情けなくも人間味のあるキャラクターの魅力を見事に捉えた演技を見せている。

「魍魎の匣」
「魍魎の匣」

(C)2007「魍魎の匣」製作委員会

少しデフォルメされたような大胆不敵な演技で、蠱惑的ともいうべき京極夏彦ワールドを体現している役者たち。その他の作品では見られないような怪演に魅せられてしまうことだろう。

文=HOMINIS編集部

放送情報

姑獲鳥の夏
放送日時:2023年7月8日(土)11:00~
魍魎の匣
放送日時:2023年7月8日(土)13:15~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります