沢田研二だからこそ出せる自然な佇まい!松たか子との掛け合いも絶妙な人間ドラマ「土を喰らう十二ヵ月」
2023.6.8(木)
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6月に75歳の誕生日を迎える沢田研二。グループサウンズが一世を風靡した時代にザ・タイガースは絶大な人気を誇り、ボーカルを務めたジュリーこと沢田はスーパースターとなった。今も精力的に音楽活動を続け、昨年7月からスタートした全国ツアーも開催中だ。艶のある声に磨きをかけ、エネルギッシュなパフォーマンスを見せる。
そして近年は俳優活動も大きな話題を集めている。「キネマの神様」(2021年)では、クランクイン後に逝去した志村けんの代役を務めた。「幸福のスイッチ」(2006年)以来の映画出演となったが、盟友の遺志を継ぎ、並々ならぬ覚悟でやり遂げた。また、昨年公開したばかりの主演映画「土を喰らう十二ヵ月」(2022年)では、第77回毎日映画コンクール男優主演賞や第96回キネマ旬報ベスト・テン主演男優賞にも輝いた。
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(C)2022「土を喰らう十二ヵ月」製作委員会
沢田の演技が高く評価された「土を喰らう十二ヵ月」は、数々の名作で知られる今は亡き昭和の人気作家・水上勉のエッセイを、「ナビィの恋」(1999年)の中江裕司監督が映画化した作品。京都の禅寺での修行生活で精進料理を学び、後年に軽井沢の山荘で自ら料理を作り続けた水上は、食す歓びや料理にまつわる思い出をエッセイに記した。味わい深い世界観を元に、色濃い人間ドラマが描かれる。
人里離れた長野の山荘で、愛犬とともに悠々自適の暮らしをする老作家のツトム。かつて口減らしのために禅寺へ奉公に出され、9歳のときから精進料理を身に着けた彼にとって、畑で育てた野菜や近くで採れた山菜などを使って自らこしらえる料理は日々の楽しみの一つだ。担当編集者で恋人の真知子が時折東京から訪ねてくるのを待ちわびては、彼女と一緒に食事を楽しむ。しかしまだ、13年前に亡くなった妻の遺骨を今なお墓に納められずにいた。
畑を耕しながら暮らす老作家・ツトムは沢田が演じた。食材を自ら収穫して料理し、季節の移ろいを感じながら原稿に向き合う。自然の恵みに感謝して無駄なくいただく自給自足の暮らしで、一人の時には遠く雄大な信州の山を遠く眺め、真知子の訪問を前にいそいそと食事の準備に取り掛かる。夏には梅仕事に熱中し、冬には一面の銀世界に感嘆の声をあげる。甘く穏やかな声で思い出と日々の暮らしが語られていく。
己の命と向き合い、原稿用紙に思いを書き綴るツトム。物語に溶け込むような、自然体のさりげない佇まいが静かに光る。円熟味を重ねた今の沢田だからこそ出せるものだろう。深い皺の刻まれた表情が、どう生きてどう死んでいくか、本当の豊かさとは何かを問いかける。
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(C)2022「土を喰らう十二ヵ月」製作委員会
また、中江監督が原案から着想を得て作り出したオリジナルヒロインには、松たか子が起用された。食いしん坊の編集者・真知子は、ツトムの手料理を美味しそうに頬張る。編集者らしく感じたことを素直に言葉にし、優しく厳しくツトムを支える。住む場所も年も離れた恋人だが、二人の間には安穏とした空気が漂っていた。
また、通夜振る舞いを慌てて準備する姿は息の合った夫婦のようで、ツトムの言葉に「あいよ」と応える声が温かい。そっと交わし合う視線に、男女の機微がわずかに匂い立つ。松の繊細な演技が見事だ。
原案エッセイに登場する料理は、家庭料理の第一人者として知られる料理研究家・土井善晴が手掛けた。食材選びや扱い方に始まり、手さばきの指導や器選びと細部までこだわって、目にも耳にも美味しい料理の数々を具現化している。おこげのついた炊き立てのご飯、熱々の若竹煮や囲炉裏で焼いた小芋...。思わず笑みとため息が溢れる、気持ちのいい劇中の食べっぷりは美味しさに嘘がないからだ。
好きな人と並んで一緒に食べるからこそ、この上ない多幸感が生まれる。食べることとは生きること、そして愛すること。本作は一年半以上の長い時間をかけて撮影されているが、北アルプスを望む信州の恵み豊かで美しい自然、季節の移り変わりとそこに生きる人の暮らしを丁寧に描き出していた。
文=中川菜都美
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