釈由美子が「スカイハイ」の決め台詞「おいきなさい」に込めたイズコの成長を分析
2023.5.25(木)

グラビア出身ながら女優で大成した人物といえば、釈由美子がその一人。1997年に青年誌のグラビア企画をきっかけにデビューし、雑誌やバラエティ、CMなどで活躍。その後、ドラマや映画などに出演して女優としての才能を開花させた。バラエティ番組などで見せるキュートなしゃべり方や見た目とは対照的に、映像作品ではガラッと変わった凄みのある演技を披露し、主演から助演までこなす名女優としてのポジションを確立した。そんな彼女の魅力溢れる演技を見られるのが、主演を務めた連続ドラマ「スカイハイ」(2003年)だ。
同作は、釈演じる主人公、怨みの門番・イズコの決め台詞「おいきなさい」が話題となった彼女の代表作の一つ。高橋ツトムの同名漫画を実写化したもので、自殺または殺害された現世の魂が最初に行き着く場所「怨みの門」の門番・イズコが、死者の魂に対して「死を受け入れて、天国に旅立つ」「死を受け入れず、霊となって現世をさまよう」「現世の人間を1人呪い殺して地獄へ行く」の3つの選択肢からいずれかを選ぶように迫り、死者の魂が進むべき道を選んで新たな世界へ足を踏み出す姿を描くエンターテインメント・ミステリードラマ。
主人公でありながらストーリーテラーの立ち位置でもあるイズコを演じる釈は、死に直面した魂を演じる役者たちの感情的な芝居とは対照的に、鉄仮面のごとくクールで無感情な芝居を披露。その無機質な芝居は、素の釈のキャラクターから大きく乖離していることもあり、圧倒的な存在感を醸し出している。さらに、他の演者の芝居とのコントラストを強めることで、より作品にミステリアスな深みを与えている。

(C)高橋ツトム/集英社/テレビ朝日/アミューズ
そんなクールで無機質な芝居に加え、さまざまな魂の人生に触れることでうっすらと人間らしさを纏っていく芝居のグラデーションは圧巻。赤子がさまざまな感情を覚えて成長していくように、冷たい顔に血が通いじわりと赤みが差していくように、芝居に息遣いを付与していき、毎話一度だけ登場する決め台詞の口調もじんわりと変化させている。この遅々たる成長を表現する細やかさは筆舌に尽くしがたい。
そして、第8話から第10話まで前編・中編・後編として描かれるエピソードで明かされるイズコの秘密と決断では、第1話と比べると驚きの変貌ぶりを見せており、1話完結のオムニバス形式の作品でありながら、全話を通して感じられるイズコの変化を楽しませてくれる。同作が人気を博して、続編となる第2シリーズと劇場版が制作されるのもうなずけるはずだ。
物語で描かれる人間模様に浸りながら、釈の演技の引き出しの中身を全て見せてもらえているかのような、彼女のさまざまな表情の変化にも注目していただきたい。
文=原田健
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