大きな瞳で哀しみを表現したカン・ドンウォン、カンヌを沸かせた「ベイビー・ブローカー」へと繋がるキャリア

2023.5.18(木)

5月16日より開幕した第76回カンヌ映画祭のコンペティション部門に出品されている是枝裕和監督の最新映画「怪物」。最高賞のパルムドールを競うコンペ出品はこれが7度目となる是枝作品だが、今回は2冠に輝いた韓国映画「ベイビー・ブローカー」以来2年連続の出品とあって世界的な注目度も高まっている。

是枝監督が韓国で全編撮影を行った初の韓国映画である「ベイビー・ブローカー」は、主演のソン・ガンホを筆頭に、ペ・ドゥナ、イ・ジウン(IU)らスター俳優が名を連ねる中、存在感を発揮していたのが、カン・ドンウォンだ。

■数々のヒット作品に出演！映画俳優、カン・ドンウォンの華やかなキャリア

2004年の主演映画「オオカミの誘惑」でのブレイク以降、映画を中心にキャリアを積んできた彼は、近年もイ・ビョンホンらと共演したクライムアクション「MASTER／マスター」(2016年)や、伊坂幸太郎の人気小説をもとに韓国で再映画化した「ゴールデンスランバー」(2018年)、人気サバイバルアクションの続編「新感染半島 ファイナル・ステージ」(2020年)など、数々のヒット映画に出演してきた。

モデル経験もある186cmの高身長や抜群のビジュアルを兼ね備える彼が、独特の魅力を漂わせている注目の作品が、5月25日(木)にKNTVにて放送される映画「隠された時間」(2016年)だ。

■外見は大人だが心は少年という難役！映画「隠された時間」で見せたピュアな感性とは？

日本でも2017年8月に劇場公開された映画「隠された時間」は、少年の心を持ったまま大人になった主人公と彼を信じる少女の交流を描いた、甘く切ないファンタジードラマ。

最愛の母を亡くし、義父に連れられて離島に引っ越してきた少女・スリン(シン・ウンス)は、自分と同じく親のいない少年・ソンミンと知り合い、2人だけの秘密の暗号を作って友情を育む。次第に淡い恋心が芽生える中、同級生たちと出掛けた洞窟で、スリンだけを残して3人の少年が姿を消す謎の失踪事件が発生。手がかりもなく捜査が難航する中、見知らぬ青年がスリンの前に姿を現し、自分はソンミンだと名乗る。

満月の夜に起きた失踪事件の数日後。突如現れた謎の男は誘拐犯か、失踪した少年か。

ドンウォンは行方不明になったソンミンを名乗る謎の青年を演じ、疑いの目を向ける周囲の大人たちに対して、時間と空間が止まった異空間に閉じ込められ「大人になってしまった」と主張する。

これまで様々な映画で多彩なキャラクターを演じてきたが、今作では、外見は大人だが心は少年という難役を、瑞々しく演じている。いつか帰れることを信じるソンミンは時に不安に襲われ、少しずつ心身が衰弱していく。永遠にも思える孤独な時間を支えてくれたのは、少女・スリンの存在だ。

■幼い少女と気持ちを通わせ合う...カン・ドンウォンと名子役のシン・ウンスが体現した「絆」

少女・スリンを好演したシン・ウンスはこれがデビュー作。現在は20歳となり、その後も「青い海の伝説」(2016年)や「バッドパパ」(2018年)などに出演してきた彼女の、あどけない表情に惹きつけられる。信じてもらおうと奮闘する幼いやりとりも微笑ましい。

一方、大人の姿をしているのに、ふとした瞬間に少年らしい素顔を覗かせるソンミン。あどけない子供のような泣き方や、照れくさそうな微笑みも少年の面影を残すドンウォンの演技力が、物語に抜群のリアリティをもたらしている。次第に追い詰められていく2人が、互いを誰よりも大切に思いあう姿が切ない。

当時30代半ばだったにも関わらず、ピュアな感性で演じきったドンウォン。迷子の少年の心を細やかに体現した、哀しみを湛える、憂いを帯びた瞳が印象に残った。

文＝中川菜都美

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