「ふつう」の生活を送る凄腕の殺し屋『ザ・ファブル』、愛すべきキャラクター性と岡田准一らが演じる迫力満点のアクションシーン!
2023.5.2(火)

■「プロのふつう」を目指す殺し屋を数々のトラブルが待ち受ける
連載が始まるやいなや、そのあまりのおもしろさに多くの読者を虜にした南勝久によるバトルアクション漫画「ザ・ファブル」。凄腕の殺し屋だが現在は休業中という主人公の活躍を、岡田准一主演で実写映画化したシリーズ『ザ・ファブル』(2019年)、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(2021年)は、世界基準のかっこいいアクション、オフビートな笑い、グッとくる人間ドラマが共存した最高に楽しめるエンターテインメント・ムービーだ。
圧倒的な強さにより、裏社会では「伝説の殺し屋」として噂されるようになった男、通称・ファブル(岡田)。目立つことを恐れたボス(佐藤浩市)は、彼と彼の仕事上のパートナーである女性(木村文乃)に、それぞれ佐藤アキラ、佐藤ヨウコという偽名を与え、仮の兄妹として1年間、殺しをせずにふつうに生活することを命じる。ボスと関係の深い裏社会組織・真黒カンパニーの協力も得て、2人は新天地、大阪で平穏な暮らしを満喫しようとするのだが、意に反して裏社会のトラブルに次々と巻き込まれてしまう...。
原作者の南勝久は、環状族(大阪環状線を走行する競争型暴走族)だった自身の実体験に基づく青春バトルアクション「ナニワトモアレ」で1999年にデビュー。主人公はもちろん、脇役、チョイ役にいたる登場人物一人一人のキャラクター造形や世界観など、作品の端々からにじみ出る生っぽいリアリティが特徴的な漫画家である。
「ザ・ファブル」は2014年から2019年まで「週刊ヤングマガジン」で第一部が連載され、全240話、単行本全22巻で完結。2017年には第41回講談社漫画賞一般部門を受賞。そして、映画2作目の公開後となる2021年7月には、コミックの第二部として「ザ・ファブル The second contact」が同誌でスタートし、現在も連載中だ。シリーズ累計発行部数は2000万部(2022年10月時点)を突破している。
映画1作目『ザ・ファブル』は、原作の1~7巻にあたる「小島編」のエピソード。2作目『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は、原作の9~13巻にあたる「宇津帆編」のエピソードの映画化であり、原作に沿って着々と進んでいる感じだ。

(C) 2019「ザ・ファブル」製作委員会
主人公のファブルことアキラを演じるのは、本作でコミック原作の映画初出演を果たし、「もともと原作が好きで、読者として読んでいた」という岡田准一。ずば抜けた身体能力を持つ「最強の男」をリアルに体現する、という点においては、アクションを熟知した彼ほどふさわしい俳優はいなかったのではないだろうか。
お笑い芸人ジャッカル富岡の大ファン。周囲も驚く極度の猫舌。自宅では裸族で、食事やトレーニング中も全裸。敵の奇襲に備えて、ベッドではなくバスタブで眠る。モードを切り替える時は、変顔をしながら額を指でトントンとたたく...原作で描かれていたアキラのおかしなクセや生活習慣は、映画版でもすべて忠実に再現。プロ意識が非常に高く、ことあるごとに「プロとして...」と口にし、プロとして一般市民になりきることを目標にしている現在は「ふつうなら...」と、ふつうという言葉に敏感になっているところも微笑ましい。
1作目と2作目共通のレギュラー陣としては、酒が強くて料理が得意な仕事の相棒・ヨウコ役に木村文乃。アキラが初めて出会う一般人の女性・ミサキ役に山本美月。アキラとヨウコを幼い頃から育て、殺しの技術を教え込んだボス役に佐藤浩市。大阪の裏社会組織・真黒カンパニーの情に厚い社長・海老原役に安田顕。真黒カンパニーの若手で、アキラに心酔しているクロ役に井之脇海。アキラのアルバイト先であるデザイン会社の社長・田高田役に佐藤二朗が扮する。
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(C) 2019「ザ・ファブル」製作委員会
裏社会組織内の抗争を描いた1作目のキーパーソンとして、海老原の弟分で、殺人の服役を終えて出所したばかりの小島役に柳楽優弥。下剋上を企む真黒カンパニーの幹部・砂川役に向井理。砂川が雇った殺し屋・フード役に福士蒼汰が、それぞれクセの強いキャラを映画独自の色を加えて熱演している。
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(C) 2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
また2作目では、子どもたちの安全を守るNPO団体の代表にして、裏では過保護に育てられた若者を拉致、監禁、殺害して金を奪う非情な男・宇津帆役に堤真一。宇津帆の右腕的存在の殺し屋・鈴木役に安藤政信。宇津帆と同居している車椅子の若い女性・ヒナコ役に平手友梨奈。存在感のある彼らの演技がドラマ性を高めている点も見逃せない。
■岡田の確かな実力のもと実現したアクションシーン

(C) 2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
1作目、2作目ともに監督を務めたのは、映像ディレクター・江口カン。原作コミックの映画化にあたっては、やはりアクションシーンを実写ならではの迫力ある表現で、いかにダイナミックに見せるかがキモだったのだろう。1作目では、ファイトコレオグラファー(アクション振付師)として、世界的に活躍するフランス人のスタントマン兼アクションコーディネーター、アラン・フィグラルツを招聘。さらに、日本を代表するスタントコーディネーター、富田稔率いるアクションチームMOAIも参加し、岡田准一本人もファイトコレオグラファーとして、アランと共に名を連ねている。
海外スタッフの起用もあってか、1作目に登場するバトルシーンは、アキラが大人数の敵を相手に大立ち回りを見せるド派手なエンタメアクションの色合いが強い。終盤、福士蒼汰演じる殺し屋フードとアキラが戦うシーンは、岡田が殺陣をつけたものだ。
基本的にアキラは戦う時に、目元に穴を開けた黒いニット帽を被っているので、スタントマンが演じても支障はないのだが、終始ノースタントで挑んだところに、岡田のアクション俳優としての矜持が見える。また、覆面姿に引き画で一見、地味なシーンではあるが、アキラが誘拐されたミサキと小島がいる建物に侵入するため、凹凸のない壁を手足だけでよじ登っていくシーンは注目ポイント。スパイダーマンのような軽やかな身のこなしと、それを支える彼の圧倒的な筋力には驚かされる。
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(C) 2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
さらに、2作目のアクションシーンはスケールも内容も一段とバージョンアップ!原作で描かれていた合理的で無駄がないアキラのプロフェッショナルな戦い方を反映させており、原作ファンも納得の出来となった。前作との大きな違いは、岡田がアクション作りのメインスタッフの一人として、企画の最初から関わったこと。オープニングを飾る立体駐車場での壮絶なカーアクションは、暴走した車が立体駐車場の柵を突き破って落下するという、原作ではわずか数コマのシーンを大きく膨らませることで実現した。
後半、白昼の団地を舞台に繰り広げられる、三次元空間を意識した大がかりなアクションシーンは最大のハイライトだ。外壁工事用に設置された足場が雪崩のように崩れ落ちていくなかをアキラが突っ走って、耳の聞こえない少女を救出するまでの一連のシークエンスのスリルは圧巻!どんな危機的状況でも「あー、問題ない」と飄々としたスタンスでいるアキラのかっこよさに惚れ惚れする。

(C) 2021「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」製作委員会
「ファブル=寓話」と呼ばれる最強の殺し屋が、自身の能力である殺しを封じられたまま、自分を本気で殺しに来る敵を相手に戦っていく。そんな不合理な状況にグチをこぼすこともないのが、アキラというキャラクターの魅力だ。彼が殺し屋になった背景には理由がある。激しい戦いの最中、地面に咲いた小さなタンポポを踏みそうになった彼が、そっと足を下ろす場所をずらすシーンが印象的だ。本来の素朴で優しい心を少しずつ取り戻しているアキラ。やはり続編を期待せずにはいられない。
文=石塚圭子
石塚圭子●映画ライター。学生時代からライターの仕事を始め、さまざまな世代の女性誌を中心に執筆。現在は「MOVIE WALKER PRESS」、「シネマトゥデイ」、「FRaU」など、WEBや雑誌でコラム、インタビュー記事を担当。劇場パンフレットの執筆や、新作映画のオフィシャルライターなども務める。映画、本、マンガは日々を元気に生きるためのエネルギー源。
アクションシーンで注目を集めた前作を上回るアクションが満載の第2作『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』
放送情報
ザ・ファブル
放送日時:2023年5月13日(土)19:00~、25日(木)18:40~
ザ・ファブル 殺さない殺し屋
放送日時:2023年5月13日(土)21:15~
チャンネル:チャンネルNECO
ザ・ファブル
放送日時:2023年5月20日(土)13:30~
ザ・ファブル 殺さない殺し屋
放送日時:2023年5月20日(土)15:45~
チャンネル:WOWOWシネマ
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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