アカデミー賞主演男優賞受賞、ブレンダン・フレイザーの大ヒット作!『ハムナプトラ』シリーズの歴史を振り返る
2023.4.27(木)
シリーズものは当たればデカい。例えば、『ミッション:インポッシブル』や『ワイルド・スピード』サーガは、いずれもそろそろ収束に向かいつつあるとはいえここまで長らく続き、そして毎度毎度大ヒットを記録してきた。『トランスフォーマー』シリーズもちょっとした仕切り直しを経てなお健在だ。マーベル・スタジオが量産を続けるスーパーヒーロー映画群については言うまでもないだろう。
もはやいったいどれを観たのやら思い出せなくなるほどの勢いで続行する映画フランチャイズがある一方で、いつしか終わってしまっていたものもある。『ハムナプトラ』シリーズはその代表格と言えはしないだろうか。1999年の第1作から2008年の第3作まで続いて、さらにスピンオフ作品まで作られた。
いずれの作品もそれなり以上の評価を得て、興行的にも成功している。第1作が公開された時期としては『ミッション:インポッシブル』と『ワイルド・スピード』のほぼ中間に位置し、それらと肩を並べる形でいくらでも続けられたはずだ。しかし、『ハムナプトラ』フランチャイズはふと終了してしまった。いったい何があったのか、シリーズを振り返りながら考えてみたい。
■古典ホラーをアクション・アドベンチャーに転換したアプローチが大成功
第1作『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999年)は現代に蘇った古代エジプトのミイラと、その復活に巻き込まれた主人公たちの冒険を描く。1932年の『ミイラ再生』のリメイク作品だ。『魔人ドラキュラ』、『フランケンシュタイン』(いずれも1931年)に続く、ユニバーサル・スタジオの怪奇映画であった『ミイラ再生』。その再映画化企画は80年代末期から始動している。
長いプロセスの間には、『ゾンビ』(1978年)の巨匠ジョージ・A・ロメロ、ホラー作家の大御所クライヴ・バーカーに『ハウリング』(1981年)のジョー・ダンテなどなど、いずれも恐怖ジャンルの第一線で活躍した面々が関わっては離脱していった。一度は離れたロメロが今度こそはと映画化を試みてやはりあきらめた後、ようやく監督に決まったのがスティーヴン・ソマーズだった。すでにディズニーの実写作品『ハックフィンの大冒険』(1993年)、『ジャングル・ブック』(1994年)で手堅い仕事ぶりを見せていたソマーズは、『ミイラ再生』を怪奇映画ではなく、アクション・アドベンチャー大作『ハムナプトラ』として描き直した。
主人公で冒険家のリック役を務めたのは、体重272kgの孤独な男を演じた最新作『ザ・ホエール』(2022年)で圧巻の演技を披露し、第95回アカデミー賞主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザーだった。当時いくつものコメディ作品でヒットを飛ばし、時にはドラマ作品でシリアスな演技を見せてもいたフレイザーとはいえ、マット・デイモン、ベン・アフレック、ブラッド・ピット、それにトム・クルーズらが揃ってオファーを断った後のことだった(クルーズはそれから約20年後に『ミイラ再生』を再びリメイクした『ザ・マミー』に主演。若干すべっているのだが、それはまた別の話だ)。もう一人の主人公でイギリス人の考古学者、エヴリン役はレイチェル・ワイズが務めることになった。映画デビューから5年、アクション大作にはキアヌ・リーヴス主演の『チェーン・リアクション』(1996年)から数えてこれが2本目だった。
ホラーからアドベンチャーへのアプローチの転換、それに主演2人のキャスティングが、長らく動かなかった『ミイラ再生』の企画を一気に前進させ、そして結果的に大ヒットさせたことは間違いないだろう。利発ではないが行動力はあるリックと、気難しいが根は陽気なエヴリンの活き活きとしたやり取りは、名作『アフリカの女王』(1951年)におけるハンフリー・ボガート&キャサリン・ヘップバーンの黄金コンビを思い起こさせる。
古のピラミッドから蘇ったミイラの王・イムホテップ(アーノルド・ヴォスルー)があちこちで死を撒き散らすというホラー展開がありつつ、『ハムナプトラ』があくまで明るく楽しいトーンを保ち続けているのはフレイザーとワイズの名タッグの力によるところが極めて大きい。監督ソマーズは本作の前年に、ホラー(コメディ)大作『ザ・グリード』(1998年)を手掛けている。やはり男女の名コンビが豪華客船でモンスターと戦う快作で、魅力的なキャラクターをアクションの中で転がす監督の手腕はここですでに開花していたといえる。
そういえば、『ハムナプトラ』シリーズではエヴリンの間抜けな兄ジョナサン(ジョン・ハナー)がコメディ・リリーフとして、いつでも光り輝いていた。筋肉担当の男と賢い女、およびその馬鹿な兄という図式は実質『アフリカの女王』のリメイクと言える2021年の『ジャングル・クルーズ』で、監督ジャウム・コレット=セラが繰り返していた。『ハムナプトラ』は20年早かったなあ、と思わざるを得ない。
■大ヒットを受けて続編に第3作、スピンオフまで製作されるが...
かくして『ハムナプトラ』は大ヒット、2001年にはアクションのスケールをさらに増した第2作『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』が公開される。主人公コンビの軽妙にすぎるやり取り、馬鹿な兄の魅力に、再び復活したイムホテップの恐ろしさも健在だった。そこへさらに古の王者、サソリの化身ことスコーピオン・キングまで絡んでくるのだからもうお腹がいっぱいである。この強敵を演じるのは世界最大のプロレス団体WWEの看板レスラー、ザ・ロックことドウェイン・ジョンソンで、彼を主演に据えたスピンオフ『スコーピオン・キング』まで翌02年に公開され、このまま『ハムナプトラ』シリーズは永遠に快進撃を続けるのではないか。と思ったが、しかしそうはいかなかった。
シリーズ第3作『ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝』がやってきたのは第2作から実に7年後の2008年。古代エジプトのミイラをめぐる物語が一段落し、中国に舞台を移した物語はジェット・リーやミシェル・ヨーらの香港スターを敵役に迎え、新たな展開を見せる。ちなみにヨーといえば、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022年)で第95回アカデミー賞主演女優賞を受賞しており、今作で共演した2人が15年の時を経て、共にオスカーの舞台で輝いたことはなんとも感慨深い。
しかし、今回は監督のソマーズ、さらに立役者の一人であるワイズが降板。新監督ロブ・コーエン(『ワイルド・スピード』フランチャイズの創立メンバーでもある)が手堅い仕事を見せはするものの、そうはいっても前2作からの軽妙さ、ないし安定感といったものは失われてしまっていた。やはりオリジナルの座組があってこその『ハムナプトラ』だったわけで、結局これをもってシリーズには終止符が打たれてしまった(ちなみに、スピンオフの『スコーピオン・キング』はその後2018年に至るまで、細々と続いている。ジョンソンが主演しているのは第1作のみだが)。
本シリーズでもって一時期は名を馳せ、次世代のヒットメーカーと目されたソマーズはその後『ヴァン・ヘルシング』(2004年)や『G.I.ジョー』(2009年)を監督。しかしいずれも大きなヒットとはならず、表舞台で名前を聞くことはなくなってしまった。
ワイズは『ハムナプトラ』以降も演技派としてコンスタントに活躍を続けている。フレイザーは様々な事情でしばらく第一線から退いていたが、前述の通りアカデミー賞主演男優賞を手にした。それぞれの人生模様を経て、あるいはそろそろ『ハムナプトラ』シリーズをやり直してみてもいいかもしれない。実力派が再結集し、肩の力を抜いてやってくれたらと思うのだが、どうだろうか。
文=てらさわホーク
てらさわホーク●ライター。著書に「シュワルツェネッガー主義」(洋泉社)、「マーベル映画究極批評 アベンジャーズはいかにして世界を征服したのか?」(イースト・プレス)、共著に「ヨシキ×ホークのファッキン・ムービー・トーク!」(イースト・プレス)など。ライブラリーをふと見れば、なんだかんだアクション映画が8割を占める。
放送情報
ハムナプトラ/失われた砂漠の都
放送日時:2023年5月6日(土)16:20~、20日(土)21:00~
ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
放送日時:2023年5月6日(土)18:40~、21日(日)21:00~
ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝
放送日時:2023年5月6日(土)21:00~、22日(月)21:00~
チャンネル:スターチャンネル2
(吹)ハムナプトラ/失われた砂漠の都
放送日時:2023年5月13日(土)12:30~、23日(火)23:00~
(吹)ハムナプトラ2/黄金のピラミッド
放送日時:2023年5月13日(土)14:45~、24日(水)23:00~
(吹)ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝
放送日時:2023年5月13日(土)17:15~、25日(木)22:40~
チャンネル:スターチャンネル3
※放送スケジュールは変更になる場合があります
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