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篠原涼子が母親として怒り狂う姿が印象深い!子役時代の須賀健太の集大成的な映画「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」

2023.4.10(月)

「モーニング」に連載した「ピアノの森」などで知られる人気漫画家・一色まことの代表作「花田少年史」は、2002年に日本テレビ系でアニメ化され、深夜放送にもかかわらず、高視聴率を記録。「東京国際アニメフェア」最優秀作品賞、「アジア・テレビジョン・アワード」で長編アニメーション部門最優秀賞を受賞するなど、評判を呼んだ。続いて2006年には実写映画となり、「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」のタイトルで劇場公開されている。

主人公の花田一路役を演じたのは、2005年公開の大ヒット作「ALWAYS 三丁目の夕日」での演技で「名子役」として評判となった須賀健太。本作が彼の初主演作となった。その母親である寿枝役には、篠原涼子が起用された。当時の篠原はドラマ「anego」(日本テレビ系)、
「アンフェア」(フジテレビ系)などで若い女性を中心に圧倒的な支持を集め、女優として飛躍期にあった。また一路の父・大路郎役には実力派俳優の西村雅彦。さらに、北村一輝、安藤希、もたいまさこといった個性的な顔ぶれが結集している。

映画は、小さな港町に暮らすわんぱくな小学生・一路(須賀健太)が、母親の寿枝(篠原涼子)とテレビをめぐって激しいバトルを繰り広げる場面から始まる。怒り狂う母親から逃げるため、自転車を猛スピードで走らせていた一路はトラックに跳ねられてしまう。しかし、トンネルに住み着いた少女の幽霊・聖子(安藤希)の助けを得て九死に一生を得た。ところが、この時以来、なぜか彼はこの世をさまよう幽霊の姿が見えるようになってしまった。そんなある日、一路の前に本当の父親と名乗るキザな男性・沢井(北村一輝)の幽霊が現われる。沢井の言葉に不安を感じる一路だったが、沢井を知るらしい聖子は一路に彼を信用するなと忠告するが...。

(C)2006「花田少年史」製作委員会

映画版には一路の両親にまつわるオリジナルストーリーが加えられ、死者のために奮闘する主人公がやがて両親の過去を知り、家族の絆を新たにしていく姿を感動的に描き出している。オリジナルストーリーを加えながらも、愛犬ジロ、桂ちゃんのハムカツなど、原作やアニメでおなじみのモチーフもたっぷり登場。ほのぼのとして雰囲気に包まれなら、笑いと共に物語展開していくファンタジーコメディの良作だ。

主人公を演じる須賀健太にとっては、子役時代の集大成的な作品という印象だ。快活でみずみずしさと愛おしさを感じさせる演技が秀逸で、ポテンシャルを感じさせる。母親役の篠原もパワフルかつ、時に繊細さを感じさせる巧みな演技により抜群の存在感を発揮。父親役である西村の抑えた演技も好感が持てる。また、北村が醸し出す独特な空気感もクセになる魅力で、彼が稀有な俳優であることを本作で再認識できた。

監督は、「池中玄太80キロ」など人気TVドラマの演出を手掛けた水田伸生。本作は彼の映画デビュー作となった。日本の原風景が残る漁港の田舎町と最新のCGを融合させたノスタルジックな映像美も必見である。また、主題歌「愛しさと心の壁」を人気ユニットのサンボマスターが歌ったことも興味深い。

須賀は子役時代のイメージを払拭できずに悩んだ時期もあったらしいが、近年では悪役にも挑戦するなど演技の幅を広げて俳優としても成長。近年では、清原果耶主演の「霊媒探偵・城塚翡翠」(日本テレビ系)シリーズでの刑事役などでも活躍している。ちなみに同作の主人公も霊が見えるという設定だった。

忙しい日常の中で忘れてしまいがちな、家族の絆の尊さをはじめ、愛する人への優しい思いにそっと気づかせてくれるような良作だけに、須賀や篠原のファンはもちろん、未見の人はこの機会にぜひおすすめしたい映画である。

文=渡辺敏樹

放送情報

花田少年史 幽霊と秘密のトンネル
放送日時:2023年4月27日(月)06:50~
放送チャンネル:WOWOW4K
※放送スケジュールは変更になる場合があります