菅田将暉が「あゝ、荒野」で見せる魂の叫びを感じる圧巻の演技
2023.2.8(水)
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俳優業に加え、アーティストとしても活躍する菅田将暉。ジャンルを問わずそれぞれの分野で傑出したパフォーマンスを見せており、多くの人々の心を掴んで離さない魅力溢れる人物だ。俳優としては、これまで菅田とタッグを組んできたそうそうたる監督陣が菅田の演技を褒め称えており、役へののめり込み方は卓抜している。彼のその姿勢と芝居が高次元で掛け合わされたことで、作品が「傑作」へとシフトアップしたのが2017年の映画「あゝ、荒野」だ。菅田は同作品の前篇で、第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。
同作品は、寺山修司の同名小説を、岸善幸監督が現代に訴えるキーワードを取り入れて再構築し、「前篇」「後篇」の2部作で映画化したもの。公開時の2017年から見た近未来である2021年を舞台に、ネオンの荒野、東京・新宿でもがきながらも心の空白を埋めようとする2人の男の絆と周りの人々との人間模様を描く、切なくも苛烈な青春物語。菅田は、少年院から出てきた不良・新次を演じる。

(C)「あゝ、荒野」フィルムパートナーズ
少年院を出所した新次(菅田)は、兄貴分の劉輝(小林且弥)を半身不随にした元仲間・裕二(山田裕貴)への復讐を誓っていた。裕二がプロボクサーになっていることを知った新次は、ジムに乗り込み裕二に襲い掛かるもあえなく返り討ちに遭い、ジムの外に居合わせた引っ込み思案で吃音と赤面対人恐怖症に悩む建二(ヤン・イクチュン)に介抱される。そんな2人に目を付けた堀口(ユースケ・サンタマリア)から自身が運営するボクシングジムへ勧誘され、2人はプロボクサーを目指す。
親に捨てられ仲間に裏切られた過去を持ち、裕二に復讐することだけが生きる意味となった新次に扮する菅田の演技は圧巻。周りを信じられない諦めをはらんだ空虚な目、敵と見なした相手に対する野犬のような荒々しさ、時折見せる少年のような素直な笑顔、唯一の生きる道として見つけたボクシングロードに邁進する意志の強さ、クランクイン前に半年かけて作り上げたという肉体から繰り出される本格的なボクサーの動きなど、素晴らしいポイントを挙げるとキリがない。
そんな中で、他の作品では見られない特徴である「濡れ場」について触れたい。「ベッドシーン」というより「濡れ場」という表現がしっくりくるのだが、その心は、シーンで描かれる情念だ。超人気俳優である菅田が濡れ場に挑んでいるということだけでも、どれだけ作品と役に思い入れがあるかが容易に想像でき、同作品に懸ける思いの深さを痛感させられるのだが、そんなシーンでも一切の手抜きがないところに役者としての崇高な信念を感じることができる。
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(C)「あゝ、荒野」フィルムパートナーズ
「照れ」や「見られ方」などには1ミリも頓着せず、表現の一環としてしっかりと演じており、菅田をそれだけのめり込ませるほどの作品の持つ魅力の大きさと込められたメッセージに心を震わされてしまう。
野暮ではあるが芝居について触れると、セリフがなく動きと醸し出す雰囲気だけで感情を表現しなくてはいけないという、役者としては「飛車角落ち」のような状態で演じなければならないのだが、菅田は意に介さず「饒舌に」感情を伝えている。相手役の木下あかりの芝居も相まって、2人にしか描けない「情念」を形成。性欲のおもむくままであったり、心の穴を埋めるためであったり、純粋に相手を欲したり、相手を労わったりと、セリフよりも雄弁に語られる「魂の叫び」に圧倒させられる。
前篇・後篇を合わせると、5時間を超える大作だが、一瞬も「メッセージ力」を抜いたところのない菅田の「魂の叫び」で紡がれる苛烈な青春物語の熱にあてられてみてほしい。
文=原田健
放送情報
あゝ、荒野 前篇
放送日時:2023年3月2日(木)21:00~ほか
あゝ、荒野 後篇
放送日時:2023年3月9日(木)21:00~ほか
チャンネル:ファミリー劇場
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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