大泉洋がハードボイルドな魅力を炸裂させる代表作「探偵はBARにいる」
2025.4.29(火)

作家・東直己の推理小説「ススキノ探偵シリーズ」を原作とし、同シリーズの第2作にあたる『バーにかかってきた電話』を映画化した「探偵はBARにいる」(2011年)が日本映画専門チャンネルで5月5日(月・祝)に放送される。

原作者と同じ北海道出身の大泉洋が主演を務め、舞台も北海道である。アジア最北の歓楽街・札幌ススキノで活躍する探偵・"俺"(大泉洋)のもとに、「コンドウキョウコ」と名乗る女性から「ある男に会い、彼にひとつ質問してほしい」という依頼が舞い込む。探偵は簡単な依頼だと引き受けたものの、その直後に危ない男たちに拉致されて雪中に埋められ、半殺しの目に遭う。辛くも脱出した探偵は、相棒の高田(松田龍平)と共に自力での調査を開始する。やがて彼らは、2年前の札幌再開発計画に絡んだ放火殺人事件とその実行犯の変死、さらに1年前に発生した実業家・霧島敏夫(西田敏行)の暴行殺人事件に迫っていく。その過程で探偵はクラブ「コンチェルト」の美人オーナー・沙織(小雪)と出会う。彼女は殺された霧島の元妻だった...。
ハードボイルドタッチのストーリーで、派手な格闘シーンも多くアクション色が満載。大泉演じる探偵もなかなか強いが、彼以上に高田の強さが異常なレベルで、迫力の格闘シーンも見どころだ。フィリップ・マーロウをはじめ、ハードボイルド作品の多くは主人公の人間的な魅力が軸となっているが、本作の主人公もなかなか個性的だ。主人公の氏名が不詳で誰からも名前を呼ばれない点も面白いが、携帯電話を持たずに行きつけのバー「ケラーオオハタ」の名刺を渡して、依頼人からの連絡は店の電話で受けるスタイル。それがタイトルの由来にもなっている。お調子者だが「依頼人を守る」という信念は揺るがず、ヤクザに脅されようと大男に半殺しにされようと、真実を徹底して追い続ける生きざまはカッコいい。相棒の高田は北海道大学農学部の助手で、空手の師範代でもある。彼の愛車は光岡自動車製のビュートだが、相当なおんぼろクルマ。辛うじて走っているが彼は非常に大切にしている様子。キザなセリフを吐いてもあまり板についていない探偵と、飄々として怠惰な雰囲気を漂わせる高田。そんな2人の凸凹コンビぶりなど、コミカルな場面も映画の魅力となっているが、基本的にはあくまでハードボイルド。ミステリアスな沙織の美しさや悪役たちをはじめ、妙にキャラが立った脇役陣の個性など、魅力満載の作品に仕上がっている。監督の橋本一をはじめ、脚本を手掛けた古沢良太、脚本兼プロデューサーの須藤泰司、音楽の池頼広というスタッフ陣は、テレビ朝日の「相棒」シリーズのメンバーが多数。最後まで展開が読めず、視聴者が謎解きに惹きつけられてしまうのは「相棒」同様だ。

共演陣では、敵役のカトウを演じた高嶋政伸 (※「高」は正しくは「はしご高」)が強烈で、舌や耳にピアスをつけての怪演ぶりで新境地を開拓している。出番は決して多くないが非業の最期を遂げる実業家・霧島を演じる西田敏行もさすがの存在感を発揮する。探偵の飲み友達の新聞記者・松尾役の田口トモロヲも情けない感じがハマって好演。探偵に情報を提供するヤクザ・相田役の松重豊もいい。また、放火犯の父親・田口幸平を演じた有薗芳記の演技が非常に印象深い。有薗は、劇団・第三エロチカで活躍後、舞台や映像作品に多数出演し、「風林火山」の河原村伝兵衛役、「平清盛」の藤原経宗役など、大河ドラマの常連でもある。ただ、なんといっても本作の魅力を脇で支えているのは、沙織役の小雪だろう。独特の派手さと妖艶さを醸して、物語の核となるだけの強烈な個性を発揮している。ハードボイルドには美女がつきものだが、本作はまさに小雪の魅力を最大限に生かした作品と言っていい。

そんな味のある脇役たちが光っているのも、大泉と松田が中心にどっしり構えているからに違いない。本作は第35回日本アカデミー賞で作品賞、脚本賞、主演男優賞など7部門で優秀賞を受賞するなど高い評価を受けた。初日から2日間だけで12万人超を動員し、映画観客動員ランキングで初登場1位を記録し、興行的にも成功。ヒットを受けて続編の製作も決定した。2013年に第2作「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」、2017年には第3作「探偵はBARにいる3」が公開されており、これらもあわせて放送される。
シリーズ第1作である「探偵はBARにいる」は、大泉が俳優としてさらに飛躍する契機となった作品でもあり、文字通りに体当たりで演じている。彼のルーツである北海道の大地で躍動する雄姿は、やはり格別な魅力を放っており、大泉の原点を見ることができる映画として、ファンの脳裏に強烈に焼き付いているはずである。
文=渡辺敏樹
放送情報【スカパー!】
探偵はBARにいる<PG-12>
放送日時:2025年5月5日(月・祝)20:00~ほか
探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点<PG-12>
放送日時:2025年5月5日(月・祝)22:15~ほか
探偵はBARにいる3<PG-12>
放送日時:2025年5月6日(火・振休)00:25~ほか
放送チャンネル:日本映画専門チャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合があります
-
鈴木亮平の誠実さを宿した真っ直ぐな目が役に説得力を与えたドラマ「テセウスの船」
提供元:HOMINIS4/29(火) -
今田美桜の豊かな表現が福山雅治、大泉洋の名演の隣でキラリと光る!「ラストマン-全盲の捜査官-」
提供元:HOMINIS4/29(火) -
トップスター・礼真琴をはじめ、星組の面々が話題のインド映画を舞台化!「RRR × TAKA"R"AZUKA ~√Bheem~」
提供元:HOMINIS4/29(火) -
大泉洋がハードボイルドな魅力を炸裂させる代表作「探偵はBARにいる」
提供元:HOMINIS4/29(火) -
小泉孝太郎のゴルフ愛と人柄が炸裂!藤森慎吾と共にキッチンで腕を振るう超レアな姿も披露
提供元:HOMINIS4/29(火)