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山田孝之&沢尻エリカ、若手時代から"実力派"と称賛された2人が魅せる名人級の芝居と圧巻の表現力

2025.4.28(月)

主演から助演まで、作品のポジションに関わらず観る者の心をとらえ、常にインパクトを残し続ける俳優・山田孝之。また、役者としての実力は折り紙つきの俳優・沢尻エリカ。この若手時代から"実力派"と称賛された2人が共演した作品が映画「手紙」(2006年)だ。

東野圭吾原作の映画「手紙」で主演を務めた山田孝之
東野圭吾原作の映画「手紙」で主演を務めた山田孝之

(C)2006『手紙』製作委員会

同作品は、人気作家・東野圭吾の傑作の1つである同名小説を映画化したもので、犯罪加害者の親族の視点で、社会的偏見とその影響を描きつつ、主人公の心情の動向と成長を追った物語。工場で働く20歳の青年・直貴(山田)には、刑務所に服役中の兄・剛志(玉山鉄二)がいた。母子家庭で育ちながらも母を亡くしたことで弟の親代わりとなっていた剛志は、直貴の大学進学の費用を手に入れるために強盗に入った家で誤って人を殺してしまい、無期懲役刑を受けていた。兄のせいで人生が狂わされ、夢さえも諦めることになり、愛する女性との幸せも脅かされた直貴は、ついにある決断を下す...。

■"醸し出す雰囲気で語る"山田孝之、"変わらなさ"を表現した沢尻エリカ

(C)2006『手紙』製作委員会

東野作品の中でも極めて人気の高い原作は、社会的偏見に振り回されながら耐え忍ぶ日々を送りつつ、周囲の人々の助けを借りて成長していく青年の心情と成長が描かれており、涙なくしては語れない名作だ。そんな名作の主人公を、山田は繊細かつ丁寧に演じ上げている。偏見にさらされ心が荒んでいくさまや、社会に対する諦めを抱いていくところ、常に兄のことがチラつき心が失われていく様子など、物語の中での経過した時間をしっかりと心理描写で表現。

また、"社会から隠れて逃げて生きていく"という生き方にシフトチェンジしていくにつれて直貴は感情を表に出さなくなっていくのだが、そんな直貴を演じながらも心の機微を芝居で雄弁に語っている。しかも、表情や所作という具体的な演技ではなく、醸し出す雰囲気で語るという、名人級の芝居を披露しており、この味わい深い演技が観る者の心をどうしようもなく揺さぶってくる。

加えて、原作での「直貴はバンドでデビューするという夢を追う」という設定が、「お笑い芸人となりスターになる」というものに変換されているのだが、場を明るくさせて笑いを生み出す仕事を志しながらも、どこか兄のことが薄く落ちないシミのようにこびりついている様子を見事に描写。そのコントラストがより作品に濃い影を落とし、切なさを増幅させている。

(C)2006『手紙』製作委員会

一方の沢尻は、直貴が20歳の時に働いていたリサイクル工場で出会ってから、事あるごとに会いに来て、直貴の人生に寄り添い続ける女性・由美子を熱演。直貴に積極的にアピールする姿や、地方から上京してきて次第に外見が都会風に変化しながらも、直貴の前では変わらない芯の強さと優しさを瑞々しく表現している。特に、由美子の"変わらなさ"が、葛藤し、迷い、悩み続ける直貴を、夜道の月明りのように、ぼんやりとだがしっかり照らし導くという展開となるため、沢尻の演技1つで作品の持つメッセージのテイストが変わってしまうという重要なキャラクターなのだが、時折ポイント的に登場するという頻度の中でも、さすがの表現力で作品を支えている。

山田の"醸し出す雰囲気で語る"名人級の芝居と、作品の屋台骨となるキャラクターの"変わらなさ"を演じてみせた沢尻の圧巻の表現力に注目しつつ、東野圭吾が投げかけてくるメッセージを受けとってほしい。

文=原田健

放送情報【スカパー!】

映画「手紙」
放送日時:2025年5月15日(木)21:30~
チャンネル:フジテレビTWO ドラマ・アニメ
※放送スケジュールは変更になる場合がございます