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渋谷すばるの圧巻の歌声と、二階堂ふみの繊細な演技が印象的!山下敦弘監督が大阪を舞台に描く映画「味園ユニバース」

2025.4.27(日)

大阪府中央区千日前、夜になると赤と青のネオンが光輝く「味園ビル」は、1950年代に建設された、千日前エリアの夜のシンボルだ。その中にある「ユニバース」は、かつては"世界最大級のキャバレー"と言われて盛況を博したが、2011年にキャバレーとしての営業を終了、その後はライブホールとして、大阪の若者を中心に愛される場所に。ビルの老朽化などにより「味園ビル」は2024年末に営業を終了、地下の「ユニバース」も今年6月末に閉館が決まっているが、長きに渡って大阪ミナミのランドマークとして親しまれてきた場所だ。

そんな"味園ユニバース"を題材に、渋谷すばるを主演に迎えて製作されたのが2015年の映画「味園ユニバース」だ。

渋谷すばると二階堂ふみが共演した「味園ユニバース」
渋谷すばると二階堂ふみが共演した「味園ユニバース」

(C)2015「味園ユニバース」製作委員会

刑務所から出所したばかりの大森茂雄(渋谷)は、謎の男に襲われて記憶喪失になってしまう。ふらふらと辿りついた公園で眠りにつき、目を覚ますと、そこではバンド「赤犬」のライブが行われていた。何かを思い立ったようにライブに乱入した茂雄だったが、歌い終わると気絶してしまい、赤犬のマネージャー・佐藤カスミ(二階堂ふみ)の家に運び込まれる。名前も素性もわからない茂雄を、カスミは"ポチ男"と名付け、祖父と住む自宅に居候させることに。そして、ポチ男の歌声に興味を持ったカスミは、赤犬のボーカルにポチ男を迎え入れ、「ユニバース」でライブをやることを提案。しかしその矢先、フラッシュバックによりポチ男の記憶が少しずつ戻り、カスミもポチ男の正体に近付いていく...。

■渋谷すばるが圧巻の歌声と印象的な目の演技で魅せる

(C)2015「味園ユニバース」製作委員会

本作で渋谷が演じたのは、記憶は失ったが、歌うことだけは忘れなかった"ポチ男"こと大森茂雄。記憶喪失のためか口数こそ少ないポチ男を、渋谷は印象的な"目の演技"で表現した。

物語の始まり、刑務所から出所したばかりの茂雄は虚ろな目をしている。しかしその後、広場での赤犬のライブに乱入した際には、茂雄は鬼気迫る表情で圧倒的な歌声を聴かせる。和田アキ子の「古い日記」をアカペラで歌うこのシーンのインパクトは強烈で、渋谷の声に吸い込まれるように、一気に映画の世界へ引き込まれる。

(C)2015「味園ユニバース」製作委員会

記憶喪失になり、ポチ男としてカスミの家に住むようになった彼の目にはピュアさが感じられる。カスミに連れて行かれた病院で自身の頭のレントゲン写真をまじまじと見つめて「これ、ほしい」と言ったり、カスミの作ったごはんを「うまい、うまい」と頬張ったり。ポチ男の一挙一動は、カスミが見ず知らずのポチ男を放っておけず家に迎え入れた理由として納得させてくれる。その後、フラッシュバックを繰り返すポチ男は、やがて大森茂雄としての記憶を取り戻す。そこからはポチ男とは一変、目つきや話し方までガラッと変え、危うい過去を持つ茂雄を体現した渋谷の演技は見事だ。

■ヒロインの内面まで繊細に表現した二階堂ふみ

(C)2015「味園ユニバース」製作委員会

そしてヒロインのカスミを、二階堂が関西弁で好演した。カスミは一見気が強く見えるが、その中にはしっかり優しさを持っている。特に印象的なのは、ユニバースでのライブを決めたことをポチ男と赤犬に告げるシーン。言い方こそぶっきらぼうではあるものの、記憶喪失で過去を失ったポチ男のためにライブを提案するところに、カスミの優しさを感じられる。そんなカスミの強さの中にある優しさと過去の事情に秘めた弱さを、二階堂が繊細に表現している。

劇中での、渋谷と赤犬によるライブパフォーマンスも圧巻の本作。渋谷の印象的な演技と、繊細な表現でヒロインを演じた二階堂の演技に注目しながら見てほしい。

文=HOMINIS編集部

放送情報【スカパー!】

味園ユニバース
放送日時:2025年5月16日(金)21:00~
チャンネル:映画・チャンネルNECO
※放送スケジュールは変更になる場合がございます