人気の英国ミステリー『ヴェラ~信念の女警部~』主演ブレンダ・ブレシン&原作者アン・クリーヴスがシリーズ終了への思いを語る
2025.4.23(水)

2011年に放送開始以来、英国 ITVを代表する看板ミステリーシリーズとなっている『ヴェラ~信念の女警部~』の最終章となるシーズン14がミステリーチャンネルにて独占日本初放送される。それに先駆けてシーズン1~13が一挙放送され、14年間の歩みを振り返るドキュメンタリー『お疲れ様!わが友ヴェラ~14年の歴史を振り返る』も合わせて放送される。
英国推理小説界の至宝アン・クリーヴス原作の本作は、仕事中毒で部下に対して厳しい一面を持つ言わば鬼上司的な刑事ヴェラが人間の心の機微を深く読み取りながら事件を解決に導く、人気の英国ミステリー。主人公ヴェラをOBE(大英帝国勲章: Order of the British Empire)の称号を持ち、ゴールデン・グローブ賞ほかBAFTAなど輝かしい受賞歴を誇る英国の名優ブレンダ・ブレシンが演じる。
今回は、主演のブレンダ・ブレシンと原作者のアン・クリーヴスにインタビュー。シリーズ終了への思いや撮影時のエピソード、キャリアについてなどを語ってもらった。
――おふたりが初めて会ったときの印象を教えてください
アン「私たちが最初に会ったのは...いつだったか覚えてる?」
ブレンダ「2010年だったと思う」
アン「そう、2010年、最初の台本の読み合わせのときだった」
ブレンダ「私はとても緊張していた。このドラマの舞台になるイングランド北東部のアクセントは独特でとても難しく、レッスンは受けていたけど、ちゃんと身についているのかわからなくて。それで読み合わせに行ったら、アンがいるじゃないの。"あぁ..."と思った(笑)」
アン「私も同じように緊張していた。テレビのことなんて全然わからなかったし、どうして私が読み合わせに呼ばれたのかもわからなかった。でも役者たちと一緒に座って楽しかったし、終わったらブレンダが挨拶にきてくれて、大スターの魅力に圧倒された(笑)。私自身も北東部出身ではないので、アクセントは特に気にならなかったわ」
ブレンダ「ラッキーなことに、最初のエピソードには北東部出身の役者が多かったの。とても賢いやり方。それで私の間違いを正しく直してくれた。手遅れになる前にね」
アン「ジョー役のデイヴィッド・レオンが台本についていろいろ話してくれたのを覚えている」
ブレンダ「DCIスタンホープの名前をスタノプという発音だと指摘する人もいて」
アン「スタンホープが正しいの。だけどカウンティ・ダラムに同じスペルの町があって、そこはスタノプという発音。だから人によって好きに発音すればいいと思う(笑)」
――ブレンダ、長年続いたこのシリーズですが、シーズン14で終了することにした理由を教えてください
ブレンダ「もう若くはないし(笑)、家族と一緒の時間が欲しかった。14年間も夏を満喫してないことに気づいて、ちょっと夏が恋しくなって。でも、すでに『ヴェラ』のファミリーが恋しくて会いたいと思っている。いつもだったら、この時期は次のシーズンのアイデアを出す頃なんだけど、今年はもうそれがなくて寂しいわ」
アン「このドラマは私たちにとって特別な場所でもあるの。ドラマのなかに登場する北東部って、イングランドのなかでも少し寂れた地域だけど、このドラマはこの地の美しさやこの地に生きるキャラクターたちの強さを讃えるものだから」

(C) ITV Studios Limited 2024
――ブレンダは降板したことを後悔しているみたいですが
ブレンダ「6ヵ月前に撮影が終わったの。毎日最低でも1日16時間の撮影をするから、とてもハードワークで終わるとぐったり。例えば、美味しい料理でもお腹いっぱいになったら、デザートを出されても要らないって気になるでしょう(笑)でもすぐにまたお腹がすく。1週間もすると、さあメニューを見てみましょうかという感じで(笑)。きっとこの先、そういう気持ちになって後悔するかもしれないけど、今はこの状況に満足している」
――「ヴェラ」を日本でいち早く放送している放送局ミステリーチャンネルで行った英国ミステリードラマの視聴者投票では、「ヴェラ」が二年連続の一位になりました。視聴者からも作品愛を感じるメッセージをたくさんいただいています。日本でも大変愛されていることについて、なぜだと思いますか?
ブレンダ「それは素晴らしい!ヴェラはよくいる男性の刑事ではないし、キャットウォークから飛び出してきたようなタイプの女性でもなく、より共感できる存在だからだと思う。もしヴェラが刑事でなかったら、その辺の通りを普通に歩いていると思うわ」
――視聴者のコメントで最も多いのが、ヴェラの人間性に関するコメントです。大好き、上司にしたい、という声が多いです。そのことについてどう思いますか?
ブレンダ「ヴェラは人を馬鹿にしたりしないし、人を理解しようとしている。そして誰に対しても公平である。恋愛対象に依存することもない」
アン「あらゆる世代のすべての女性は、強い女性を見るのが好きなんだと思う。ヴェラはチームを統率し、おしゃれをして着飾る必要もなく、夫が何をしているかも心配せず、子供や孫の学校の送り迎えもせずに、ただ優れた刑事であるというキャラクター。だから人気があるんじゃないかと思う」
――おしゃれをするという話がでましたが、14シーズン中、どのくらいのコートと帽子を着倒したんでしょうか
ブレンダ「何着か用意してあったわ。ときどき代役が何かしなくてはいけないときがあったし、例えば海辺のシーンで、コートに泥がかかってしまうと、リテイクする場合は新しいコートを着なくてはならない。だから交換して着ることができるために何着も用意してあった。でも、当初あの帽子はひとつしかなかったの。あるとき、帽子を着用して撮影した後、何かの理由で撮影がストップし、また始めようというときに帽子がどこにも見つからなくて。衣装部のせいにしたんだけど、きっと私がどこかに置いてしまったのね(笑)。その後、スペアの帽子を用意して...もしかしたら作り直したのかもしれない。あのタイプの帽子はなかなか見つからないの(笑)」
アン「今ではニューカッスルの日曜日のストリートマーケットで、似たような帽子を売っている。"ヴェラ・ハット"という名前でね(笑)」
ブレンダ「友達のひとりが教えてくれたんだけど、イタリアのトリノで、ブティックのショーウィンドーにヴェラにそっくりの帽子とコートが飾ってあったそうで写真を送ってくれた。まったく同じなの!(笑)」
アン「私はヒースロー空港のプラダで、同じような帽子を見た(笑)」
ブレンダ「数年前に『グレアム・ノートン・ショー』に出演したときにその写真を紹介したわ」

(C) ITV Studios Limited 2024
――最終シリーズの撮影が終わって、帽子は引き取りましたか
ブレンダ「ええ、ときどきヴェラの格好をしてチャリティ・イベントに参加することがあるから。北東部で"SundayforSammy"という大規模なチャリティ・イベントがあるんだけど、数年前にTVシリーズの刑事たちが出演する企画があり、ヴェラの帽子とコートを着てスタジアムに登場したら、屋根が落っこちるんじゃないかと思うくらいの歓声があがった。素晴らしかったわ!」
――撮影の最終日はいかがでしたか。やはり思いが込み上げるものがありましたか?
ブレンダ「ええ、私だけでなく全員ね。最終日はドラマのラストシーンではなかった。プロデューサーのウィルの提案で、捜査本部のシーンの撮影になった。キャスト全員がいるから、みんなで収録の最終シーンを分かち合えるということで」
アン「私も最後の2日間の収録を見に行った。撮影後はスピーチがあったり、シャンパンで乾杯したり。ブレンダの愛犬のジャックもいた」
ブレンダ「私はあまりに胸がいっぱいであまり覚えてないの。泣かないようにするのが精一杯で」
アン「それから、セント・ジェームズ・パーク(注・ニューカッスルにあるサッカースタジアム)で、キャストやスタッフが集まって打ち上げパーティが行われたわ」
――原作小説とドラマ化では演出上異なる部分もあると思いますが、原作に忠実に描かれていると最も感じるのはどういった部分ですか?
アン「実を言うと、あまり細かいことにはこだわりはなかった。犯人が原作と違う人物だとしても気にしなかった。私にとって一番重要だったのは、キャラクターが原作と忠実なままであるということだと思う。そしてヴェラとジョーの関係も。原作のなかでは、ジョーはヴェラにとって自分の息子の代わりになる存在として描写されているけど、演じる俳優たちにそれがとても上手く理解されていたと思う。キャラクターや雰囲気などに命を吹き込んでくれて、とても満足しているわ」
――おふたりがキャリアをスタートした頃は何を達成したいと思っていましたか?
ブレンダ「女優になったのは偶然なの。演劇学校に通う前は、ブリティッシュレール(注・英国の国鉄)で10年間秘書として働いていた。知人の女性がアマチュア劇団に入っていて、"週末にマンチェスターのコンクールにエントリーしたんだけど、メンバーのひとりが急病になってしまって、お願いだから代わりに出てくれない?セリフはひとつだけだから"と言われて、彼女を助けるつもりで出演したの。実際にやってみたら、すごく楽しくて!衣装を用意する人がいて、背景の絵を描く人がいて、照明を調整する人がいて、チケットを販売する人がいる。いろいろな異なる才能を持つ人々が集まって芝居を作りあげるということに魅力を感じて、グループに参加することにしたの。ロンドンに戻った後、リージェンツパークにあるルドルフ・シュタイナー・ハウスの劇場で芝居を行った。私はいつも年齢より若く見られるんだけど、当時も30代くらいだったのに見かけは10代だったから若い役を得た。やればやるほど演技も上手くなって、舞台で芝居することが大好きになった。周りの人から、"プロの女優になれるんじゃない?"って言われたけど、"この恵まれた職を辞めて、趣味を仕事にするなんて、馬鹿を言わないで"って返事していた。でも多くの人から言われたら、"女優になるのもアリなんじゃないか。自分が大好きなことだし"って思うようになって。それで内緒で演劇学校に応募してみたら、合格してびっくりだった。私の目標は、単に舞台で芝居をすることで、テレビや映画の仕事をすることは考えてもなかった。それはちゃんとした俳優がすることで、私は演劇学校に通っているブレンダに過ぎなかった。自分自身、自分が俳優であるとは思っていなくて、私はただ"演技をする人"だったの(笑)」

アン「私の野望は、生活費を稼ぐためにしていた仕事を辞めることだった。20年間実現できなくて、本を出版した後でも、パートの仕事を続けていた。ここまでくるには、それだけ長くかかった。それから、もっと良い本を書くという野望もあったわ」
ブレンダ「アン、『Vera』シリーズの前に書いていた本にシリーズものはあるの?」
アン「ええ、最初のシリーズ(注・『GeorgePalmer-Jones』シリーズ)は、定年退職した自然主義者のアマチュア探偵が、自然保護区の島で起きた事件を解決するというもの。私の夫はRSPC(注・動物愛護の慈善団体)で働いていたので、そこからアイデアを得たわ。次のシリーズ『InspectorRamsay』は、その頃初めてノーサーバンバーランドに引っ越したこともあって、舞台はイングランド北東部になっている。初期の作品が再販されたり増刷されたりして、みなさんが楽しんでくれるのは素晴らしいことだわ」
――今後、ヴェラのシリーズを執筆する際にも、ブレンダの顔を思い浮かべますか?
アン「そうね、執筆の際にキャラクターの顔を思い浮かべることはないけど、会話などでブレンダの声が聞こえてくるのは確かね」
――撮影中に起こった面白い出来事を教えてください
ブレンダ「ファンフェア(移動遊園地)のシーンを撮影したとき、監督はファンフェアの中を突っ切って犯人を追うというシーンを撮影しようとして、時間をかけて準備をし、全員が正しい場所にいるように調整したのね。そのシーンの最後に公衆トイレの前を通りすぎるんだけど、リハーサルを何回も繰り返して、いざ本番となって、もう少しで終わりというときに、その公衆トイレから老婦人がでてきて、いきなり私に向かって、"あらヴェラじゃない、大ファンなの!"って(笑)。撮影中なのにまったく気が付かず、話しかけてきたのよ」

(C) ITV Studios Limited 2024
――ご自身の性格と"ヴェラ"というキャラクターと似ている部分、異なる部分などはありますか?
ブレンダ「謎を解くのは好き。タイムズ紙のクロスワード・クラブのメンバーなの。たとえ解決できなくても、解決しようとするのが楽しい。ヴェラと同じように、自分も公平な人間だと思う。それからユーモアのセンスもある。私の両親はとても貧しくて、あまり物は残してくれなかったけど、両親からはユーモアのセンスを受け継いだ。それは貴重だと思う」
アン「それからヴェラとブレンダは、どちらも思いやりがあって親切よ」
ブレンダ「こんなこともあった。以前、母と待ち合わせをしていたとき、ナショナルシアターで学生のグループに呼び止められ、写真を一緒に撮って欲しいと言われた。スマホよりも前の時代で、カメラのレンズを調整したりして時間がすごくかかって、母のところにやっと着いたとき、"お母さん、ごめんなさい、学生のグループから一緒に写真を撮りたいと言われて"と母に言ったら、"あら、素敵じゃないの。一体あなたのこと誰だと思ったのかしら?"って(笑)」
――『ヴェラ』の撮影が終わって、何をしていますか
ブレンダ「仕事を辞めたわけではなくて、ヴェラの撮影後にすでに映画の一本に出演したわ。おそらく『Dragonfly』というタイトルになる予定。ヴェラの撮影後すぐにオファーがきて、来週から撮影が始まるとエージェントに聞いて。まだ北東部から戻って荷解きもしてないのにと思ったけど、アンドレア・ライズバラも出演するということで、脚本を読んでみたら、とても良かったので、そのまま受けることにした」
――ミステリー小説を読むとき、誰が犯人かを推理しながら読みますか?
アン「私はしない。最後にサプライズがあるほうが面白いから」
ブレンダ「小説ではないけど、脚本を読みながら、私が推理して脚本家に誰が犯人と思うかを伝えて、その結果でストーリーを調整するということあったわ」
――現実世界で刑事だったとしたら、良い刑事になると思いますか?
ブレンダ「そうね、良い刑事になれると思う」
アン「あなたはなれると思うわ」

(C) ITV Studios Limited 2024
――日本のファンへメッセージをお願いします
ブレンダ「ドラマを見てくれて本当にありがとう。そしてこの十数年間、応援してくれて感謝しています。最後のエピソードはアンの本『TheDarkWives(原題)』をドラマ化したもので、とてもスリルのある謎解きに、ヴェラのストーリーを織り交ぜたものになっています。いつも通りのドラマ製作の質を保っているし、素晴らしいエピソードになっていると思います」
アン「いつも応援をありがとう。最終シリーズを見るのを楽しみにしていてください」
――ドラマのラストで、何かこれで最後のような説明みたいなものはあるんでしょうか?
ブレンダ「説明みたいなものはあるにはあるけど、それ以外はノーコメント(笑)」
※インタビューは2024年11月に実施
文=HOMINIS編集部
放送情報【スカパー!】
ヴェラ~信念の女警部~(シーズン1~13)一挙放送
2025年5月3日(土) 6:00~ 一挙放送
ヴェラ~信念の女警部~(シーズン14) ※ファイナルシーズン、全2話
2025年5月10日(土) 16:00~放送
お疲れ様!わが友ヴェラ~14年の歴史を振り返る(全1話)
2025年5月10日(土) 19:40~放送
エリス~覚悟の警部
2025年5月11日(日) 16:00~放送
放送チャンネル:ミステリーチャンネル
※放送スケジュールは変更になる場合がございます
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